JR磐越西線の会津若松駅(福島県会津若松市)-新津駅(新潟市秋葉区)間(111キロ)を蒸気機関車(SL)が牽引(けんいん)する「SLばんえつ物語」が今月29日、運行開始から25周年を迎える。SL列車は全国各地にあるが、老朽化への対応や整備士の確保など困難が多く、運行を終了するケースも出ている。それだけに、復活から4半世紀がたつ列車には、注目が集まっている。
容易ではないSLの維持
牽引するのは、C57形蒸気機関車の180号機。C57は大きな動輪とスマートなボイラーの形から「貴婦人」の愛称で親しまれている。180号機は昭和21年に製造、44年に廃車された後、新潟県新津市(現・新潟市秋葉区)の小学校に保存されていた。
保存された地域は古くから車両工場があり、鉄道との結びつきが強かった。そんな中で、C57を再び走らせようという機運が高まり平成10年に復活が決定。11年4月に復活を遂げた。
以来、主に4月から11月までの週末を中心に運行され、多くの家族連れや鉄道ファンに親しまれてきた。しかし、今年で製造から78年が経過するSLのコンディションを維持するのは簡単ではない。
山口県を走るJR西日本の「SLやまぐち号」を牽引するC57形1号機は、4年前にシリンダーが故障し、今も走れないままだ。JR西日本中国統括本部は「復帰させたいが、修理方法も含めて検討中」(広報担当者)で「今後の見通しは立っていない」(同)と明かす。
また、JR九州が運行していた「SL人吉」は、惜しまれながら今年3月に運転を終了した。牽引していた8620形が製造から100年以上たち老朽化が目立ったことや、整備士の確保が困難になったことなどが引退の理由だった。
県外からもファン続々
SLばんえつ物語も不具合の発生は珍しくなく、運休が続いたこともある。JR東日本新潟支社は「古い車両なので先は読めないが、できる限り走らせたい」(広報担当者)としている。運行存続の鍵を握る、整備士については「ベテランから若手に技術の継承を行っており、必要な人数は確保できている」(同)という。
今年度の運行開始2日目の4月7日、福島県喜多方市の有名な撮影ポイント「一ノ戸川橋梁(きょうりょう)」には、列車通過時刻が迫ると地元の車だけでなく、県外ナンバーの車も続々と集まった。
撮影していた同県郡山市の男性会社員(40)は「SLばんえつ物語を撮るようになって15年ほど。年に何回か沿線を訪れるが磐越西線の魅力は風景。春の花や新緑、秋の紅葉など、どんな時期でも良さがある」とし「ずっと走り続けてほしい。地元への経済効果や注目度を考えると、SLは大切な存在」と強調していた。(芹沢伸生)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。