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<生物学者らによる国際チームが生活スタイルと口の中の微生物の関係について分析した結果について>

口の中の微生物はいかに食物を消化し、免疫システムが感染症と戦い、そして口臭に影響を与えているのか。

ネパールの63人の唾液の口腔微生物群(口腔内に生息する細菌、ウイルスなどの総称)の違いや喫煙、食生活などの要因から、生物学者らによる国際チームが生活様式との関連性について明らかにした。


 

ネパールのチェパン族(採集狩猟民)、ラジ族とラウテ族(近年まで狩猟採集をしており、現在は農業に従事)、タルー族とネワール族(300年以上農業に従事)、過去20年間にネパールからアメリカに移住したネパール人、そして比較のためにヨーロッパ系アメリカ人の口腔微生物群を調査した。

その結果、グループ間での口腔微生物群の違いは比較的小さいことが判明。腸内微生物は時間の経過とともに大きく変化する可能性があるが、口腔微生物は変わりにくいと研究者らは述べる。

しかし、採集狩猟民から農業従事者、そして都市生活者の間では、構成される口腔微生物に変化の勾配が見られる。つまり、口腔微生物には生活スタイルが役割を果たしていることを示す結果となったのだ。

都市部で暮らす人々のグループで大幅に増加していた菌株の1つにアトポビウム(Atopobium)があった。この細菌が多いと虫歯など歯の健康に悪影響を及ぼすことがわかっており、口臭の原因となる。

また、口腔微生物群の構成に影響を与えると思われる他の要因として、喫煙、食物繊維、摂取する炭水化物が挙げられる。

特に大麦とトウモロコシから炭水化物を摂取するグループと、主に米や小麦を摂取するグループの間で顕著な違いが見られた。

大麦とトウモロコシは繊維が多く、消化されにくいデンプンを含んでいるため、口腔微生物の健康状態が良くなる一方、米や小麦を食べると唾液アミラーゼ(口内でデンプンの消化をする酵素)が増加する。

また、ネパール人の被験者がネトル(シスヌ/セイヨウイラクサ)を噛むかどうかによっても違いが見られた。本研究を主導したペンシルバニア州立大学エバーリー・カレッジ・オブ・サイエンスのエミリー・ダベンポート助教授は次のように述べる。


 

「口腔微生物が摂取する穀物によって違いが見られることは理にかなっていますが、ネトル(シスヌ/セイヨウイラクサ)との関連性も見られることは興味深いことです。

ネトルは、本研究での採集狩猟民のグループがガムのようによく噛んでいる繊維質の植物です。ネパールの料理、文化、医療における重要な役割を考慮すると、口腔微生物と関連があるのは興味深いことです」

口腔内微生物は十分に研究されておらず、研究のほとんどが西洋人を対象に行われてきた。また先行研究では、都市部のヨーロッパ人と地球の反対側の採集狩猟民のグループの唾液など、異なる地域間での口腔微生物の比較が行われてきた。しかし、本研究では地理的要因と生活様式の変化を分けて調査できたとして、ベンポート助教授は次のように述べる。

「本研究から多くの学びがありましたが、微生物群は世界中で異なっています。口腔微生物の多様性や構成が生活様式によって、どのように変化するかをグローバルな文脈で研究することで、人間の健康に及ぼす影響についての知識を深めることができます」

本研究は11月4日に科学学術誌「マイクロバイオーム(Microbiome)」で発表され、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、スタンフォード大学、およびニューヨーク大学アブダビ校の研究助成を受けている。

【参考文献】
Ryu, E. P., Gautam, Y., Proctor, D. M., Bhandari, D., Tandukar, S., Gupta, M., Gautam, G. P., Relman, D. A., Shibl, A. A., Sherchand, J. B., Jha, A. R. (2024). Nepali oral microbiomes reflect a gradient of lifestyles from traditional to industrialized, Microbiome 12(228).


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