さまざまな分野で功績をあげた人たちに贈られる春の褒章の受章者が発表された。神奈川県内からは紫綬褒章=1人▽緑綬褒章=4団体▽黄綬褒章=6人▽藍綬褒章=27人―の計34人4団体が選ばれた。発令は29日。小売物価統計調査員として長年活動し、藍綬褒章に輝いた菅野広子さん(68)=横浜市神奈川区=に喜びの声を聞いた。
スーパーの生鮮食品コーナーで買い物客に交じって、商品を手に取る。買い物かごの中にはデジタル重量計が置いてあり、食品の重量と価格をメモしていく。
菅野さんが小売物価統計調査で担当するのは果物や野菜、鮮魚。調査は毎月3回で50~80品目の価格を調べる。今は定年退職した夫が車で送り迎えして、協力してくれている。
小売物価統計調査は統計法に基づくもので、細かなルールが定められている。調査対象は国内産品のみで、鮮魚はイカならスルメイカなどと品目も決められている。1日限定の特売品や高付加価値のブランド食品は対象外。一般的な大きさや形のものを選ばなければならない。規定にあった食品を求め、近隣の店を数店回ることもあるという。「なるべく普通のものを探すというのが最初は難しかった」と振り返る。
調査員を始めたのは27年前。長女が幼稚園に入園したのを機に仕事を探し、友人に勧められたのがきっかけで、初めて担当したのは横浜市中区での農林業の調査だった。「関内のどこに山林があるの」と思ったが、「東北などに山林を所有している区内在住者への調査だった」と笑顔で振り返った。
その2年後から小売物価統計調査も担当し、25年間続けている。週の後半に調査をし、結果をまとめて、県の担当部局に提出する。昔はバスで商店街を回り、八百屋や魚屋などの小売店を調査をした。仕事の時間を調整して、育児や介護とも両立した。
大都市の横浜市では、他都市にはない項目もあり、調理学校やそろばん塾なども調査対象だったことがある。「統計をやることで世界が広がった」。
この25年間で、スーパーなどの大型店が主流となり、街から小売店がどんどん消えていった。最近は物価高騰を肌で感じており、「今年の4月は、どの食品も目に見えて値上がりしている」と話す。
統計は近代国家には欠かせないもので、日本では明治以降150年以上の歴史を持つ。「調査が続いているからこそ、世界が動いているのも見える。大きな歴史の流れに関われているのかも」と受章の喜びを嚙み締めた。(高木克聡)
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