遺骨を撒いて故人を弔う、「海洋散骨」。
海洋散骨には、船を貸し切る「チャーター散骨」や、複数が乗り合う「合同散骨」などの形態がありますが、近年、業者に散骨を委託する「代理散骨」を希望する遺族が増えているといいます。

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家族が同行しない新たな弔いの形。その選択にはどんな思いが込められているのでしょうか。

出航前に“最後のお別れ”

「めざまし8」が取材したのは、亡くなった70代の叔母を見送るという、おいとめいの家族。

叔母の代理散骨を依頼した男性:
叔母が生前、「亡くなった際にはお骨を海に、海洋散骨をしてくれ」というふうな希望を聞いていたものですから。
(親族ともども)船に行って(海洋散骨に)行けたらそれが一番いいと思ったんですが、一番近しかった(故人の姉の)母がですね、体の方が優れないとうことで。船に乗って沖までいくのは難しいのかなということもあって、今回、代理散骨という形にしました。

出航前に、船内で行われたセレモニーでは、遺族が故人への思いをメッセージにしたためます。

「一緒にお酒が飲めなくて淋しいです。安らかに眠ってください」
「今までありがとう またね」

桟橋で出航の瞬間を見送る遺族

そうして、最期のお別れをすませて、遺族は桟橋で、出航の瞬間を見送ります。

沖合に移動した船から、業者が遺骨を海にまき、黙とうを捧げました。

「墓じまい」「十分供養できた」遺族の思い様々

新型コロナをきっかけに、年々増えているという代理散骨。
流通大手イオンの子会社で葬祭事業を手がけるイオンライフでは、海洋散骨全体の約8割が代理散骨だといいます。

代理散骨を選択する人の中には、こんなケースも。

両親の代理散骨を依頼した男性:
 “墓じまい”をしなければいけないというのは、一つ大きな理由です。

この先、自分の子供たちに負担をかけたくないと、「墓じまいを」決断した70代の男性。遠方のお墓に入っていた両親の遺骨を海洋散骨することにしたといいます。

男性のように、お墓が遠くにあることなどを理由に「墓じまい」するケースは、この20年で倍増。今後、さらに増加するとみられています。

そして、今回、男性が業者に代理散骨を依頼した理由には、経済的な事情もあるといいます。

両親の代理散骨を依頼した男性:
今後、年金生活者ですから。予期せぬお金がかかることだってあるので。(比較的安価な代理散骨を選んだことは)両親には申し訳ないんですけど。

他にも、今年、102歳で亡くなった母親、そして14年前に亡くなった父親を一緒に代理散骨するよう依頼した女性は、選択した理由をこう話します。

6月に両親の代理散骨した女性:
父の場合も母の場合も、亡くなって葬儀をして、散骨するまでに(遺骨を)自宅に保管しながら、十分供養できたという満足感があったので、代理の方に散骨していただいても十分であると思いました。

――ご自身は?
私たちは子供がいないので、親戚か誰かに頼む形で、私たちも散骨です。

新しい供養の形は、今後も広がっていきそうです。

「代理散骨」を依頼する際の注意点

代理散骨を依頼する際に、気をつけなくてはいけない点がいくつかあります。

終活事業を扱う「イオンライフ」によると、生前「代理散骨」を依頼する際は、依頼者と二親等以内の身内、散骨業者の三者間で契約を結ぶ必要があるといいます。

身内がないという人の場合は、死後対応してくれる後見人、または行政や身元保証サービスを利用し、対応してくれる人の準備ができたら、契約を結ぶことができます。

また、“墓じまい”で遺骨を代理散骨する際には、お墓を管理する祭祀承継者であれば散骨業者と契約は可能です。ただし、埋葬許可書など本人が確認できる書類が必要となります。

葬送ジャーナリストの碑文谷創氏によると、この時、葬送を目的とした場合問題とはならないが、遺骨の処分を目的とした場合、刑法190条の遺骨遺棄罪に当たる可能性があるといいます。
そのため散骨業者は、依頼者に弔いの気持ちがあるか判断が重要になるということです。
(「めざまし8」12月4日放送より)

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