クリスマスやお正月など、多くのイベントがある年末年始。

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そこで需要が高まるのが、生鮮食料品などの荷物を低温状態で受け取る事ができる「クール便」です。

佐川急便では2023年12月の「クール便」受注数が平均的な月に比べ2.5倍~3倍に増加。今年は、さらに増える見込みで、営業所では「クール便の商品の保管庫が足りなくなる」という懸念が浮上しているといいます。

この窮地に、佐川急便はどう対応したのか?
年末に向け需要が高まり続ける「クール便」事情は、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか?専門家に詳しく聞きました。

「クール便」の人手不足の現状

年末を控え、今まさに繁忙期を迎えている運輸系各社。
しかし、そんな中、物流業界か深刻な“人手不足”に陥っているといいます。その問題の根本にあるのが、2024年4月から適応された、トラックドライバーの時間外労働の上限規制、いわゆる「物流の2024年問題」です。

さらに、この時期増加する「クール便」の特殊さがさらなる人手不足を呼んでいるといいます。

クール便は、その性質から「置き配」ができず、対面での対応が求められます。
しかし、佐川急便の例をみると、車両保有台数は軽自動車も含めて2万5992台あるものの、冷蔵や冷凍に対応できる「クール対応の車」というのは、1万3740台と半分ほどしかありません。
通常の車をクール用に使用することは可能ですが、その場合特殊資材をのせる必要があるので、負担が生じます。

さらに、冷凍倉庫での作業もあり、ノウハウのある人材が限られるため、従業員がより不足してしまう現実があるのです。

元配達業者のドライバーだった人物に話を聞くと、「年末のクール便は大きい荷物が多く、通常の荷物なら200以上積めるところを、冷蔵・冷凍だと40~50個しか積むことができない」と話していました。

倉田大誠アナウンサー:
クール便は便利な一方で、厳しい現状はあるのでしょうか?物流ジャーナリストの坂田良平さんにお話を伺います。

物流ジャーナリスト 坂田良平さん:
(クール便は)厳しいですね。そもそも2024年問題でトラックドライバーが不足していて、皆さん「ドライバー増やせばいいじゃないか」と考えるのですが、これは2つの意味で難しいです。
まず1つ、そもそも日本はどこに行ってもどの産業でも人手不足ですから、運送会社各社もなかなか採用には苦労しています。
それからもう1つ、日本は今、少子高齢化が進んでいて就労人口がどんどん減っていますから、今、大丈夫でも3年後5年後には、また再び人手不足の問題が起きる。
そのために、これまでの“無理”とか“無駄”をなくして、“工夫をして効率よくしよう”としているんですが、「クール便」に関しては効率よくできないという構造的な問題がありますので厳しいです。

「クール便」の配送体制とは?

通常、営業所に集められた荷物は、そのままトラックに乗せて配達先の営業所に運ばれます。しかし、「クール便」は、品質保持のため一旦、「保冷施設」に送り、ここで仕分けした物が各営業所に運ばれる仕組みとなっています。

佐川急便は、「おせちのネット購入」や「ふるさと納税の返礼品の注文」などクール便の利用が増える年末、現状ある保管庫では足りなくなるという懸念から、以下の対応を行いました。

【対応1】全国の営業所に冷蔵・冷凍コンテナ200個以上を臨時に設置
【対応2】拠点から他のエリアの拠点まで荷物を運ぶトラックを増便、出勤人数も増やす

このような対応を行った結果、この年末は“通常通り配送できる見込み”とのことです。

さらに、ヤマト運輸・日本郵便・西濃運輸も12月は発送量が多くなると見込みから、安定したサービス提供のため各社対応を行っています。

今後人手不足の解消は?

この冬はなんとか乗り切れるものの、根底にある人手不足を解消しない限り、配送業者を巡る問題は解決に至りません。

物流ジャーナリストの坂田さんも「待遇は改善しようとしているが、現在トラックドライバーの半数は50代以上で、今後10万人単位で減っていく予測のため人手不足解消は難しい」と話します。

――今後私たちの生活にも影響を及ぼすのでしょうか?
物流ジャーナリスト 坂田良平さん:

「影響が出てきそう」ではなく、「もうすでに出ている」と考えていただいた方がいいと思います。
例えばコンビニなんかに、15時~16時に行くとおにぎりもサンドイッチも全くない…。ああいった物は冷蔵輸送で運ばれますので、今まではスーパーやコンビニなんかもそうですけど、1日3回~5回配送していた物を「大手でも1日2回しか配送しませんよ」って方針を変えたりしているんですよ。
ですから、ここら辺の影響っていうのは許容していただければということですね。
(「めざまし8」12月11日放送より)

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