障がいのある、ないに関わらず、車いすの目線をバルで体験するイベントが12月7日、北海道内で初めて開かれました。

 バリアフリーの必要性を実感する貴重な機会になったようです。

3分の2は健常者 車いす体験バル

 レストランで楽しそうに会話や食事を楽しむ人々。しかし、この日はいつもと違います。

 「(Q車いすの感想は?)めっちゃ難しいです。でも慣れてくると、面白さも感じます。(お盆を)持って移動できないので膝に乗っけないとダメ」(参加した健常者)

 約40人全員が車いすで参加。集まった20代から70代くらいのうち3分の2は健常者ですが、料理や飲み物は車いすのまま客が自分で取りに行きます。

 「ご飯をとって(車いすを)片手で動かすのと、右左行くのが、ちょっと分からなくなっちゃう」(参加した健常者)

 旭川市の病院のレストランで北海道内で初めて開かれた「立たない立ち飲みバル」。車いすでも取りやすいよう、料理などは特別に用意された低いテーブルに並べられました。

 この企画の発案者はSNSで車いすの暮らしなどの情報を発信する大阪出身のインフルエンサー牧野美保さん(36)。自らも病気で5歳の時から車いす生活を送る中、2年前から大阪、徳島、沖縄で開催してきました。

 「大変だろうなと思ってたことが、意外と楽しいんだと思ったり、逆にこんな小さなことでも大変なんだって体感することで分かることがあると思っている。もともとの固定観念を壊すというところが、このイベントで伝わればいい」(インフルエンサー 牧野美保さん)

障がいへの理解広げたい 道内でも開催

 このイベントを道内で初めて開催しようと呼びかけたのが、北海道旭川市で障がい者の支援をしている「チーム紅蓮」の五十嵐真幸さん(38)です。

 「皆さんも年をとったら車いすになったり、足腰が悪くなったりするので、みんなが暮らしやすい街というのが、バリアフリーということを、みんなに意識してもらえればうれしい」(チーム紅蓮 五十嵐真幸さん)

 施設長の五十嵐さんは生まれつき骨が弱い「骨形成不全症」で、車いす生活を送ってきました。インフルエンサーの牧野さんの取り組みを知り、障がいへの理解を広げたいと旭川市の病院にかけあい実現にこぎつけました。

 「新しいものや楽しいこと、みんなでできることが大好きなので、旭川でもできるよねという感じで開催にいたりました」(五十嵐さん)

車いす利用者も賛同

 五十嵐さんの施設に通う三田地正則さん(49)もイベントに賛同した1人です。

 交通事故が原因で頸椎を損傷し、胸から下は感覚がなく、握力はゼロ。21歳から車いす生活です。

 移動はもっぱら車。運転席に体を移した後、車いすを後部座席に積み込むところまですべて自分でこなします。

 「アクセルとブレーキはこのレバーと連動していて、この輪に手を入れてハンドルを回しています」(三田地正則さん)

開催当日にまさかのアクシデント

 ただバル開催当日、事前に行われた勉強会に車で向かう中で、思わぬアクシデントに遭遇していました。

 「2台止めるところがあるんですけど、もう2台ふさがっちゃってるんで、駐車場を探したいと思います」(三田地さん)

 会場の障がい者専用の駐車場がいっぱいで、入口から離れた一般の駐車場に止めることになりました。その後車いすで会場に向かいますが、目の前に車が行き来する駐車場は、簡単には進めません。

 「雪道が固まってればいいんですけど、急にやわらかい道があるので」

 「(Q腕は疲れませんか?)舗装した道路を走るより10倍疲れます」(三田地さん)

 ようやくたどり着いた会場入り口ですが、今度は雪道の段差がハードルに。記者がサポートしました。

 「今、雪が降ってなかったから良かったんですけど、帰る時間、本当に吹雪いていたら、車止めたところまでいけるか不安です」(三田地さん)

ようやく到着したバル…交流は笑顔あふれる

 移動ひとつとっても困難が伴う車いす生活ですが、バルでの交流は笑顔があふれました。

 「(全員が)同じ目線で食事をするから、すごく楽しいです」(三田地さん)

 「今回は車いすの人たちがいわゆる多数派という中で、お互いが気づきあえたというのが、すごく収穫のひとつなのかなと思う」(車いす利用者の参加者)

 「いろいろな地域でこういう体験できる機会があると、街中で車いすの方を見かけたりとかしたときに、自分でもしてあげられることがあるのかなって」(参加した健常者)

 「これを見ていただいて、そうなんだとちょっとでも気に留めてもらって興味をもってもらうだけで、実は街って変わるんだなと思っている」(五十嵐さん)

 誰もが暮らしやすい社会を目指し、互いの立場を理解する…。バルがバリアフリーの重要性を伝えるきっかけになったようです。

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