2024年11月末に400年を超える焼き物の歴史を誇る波佐見町に新たなスポットが誕生した。『波佐見を五感で味わえる拠点』にと、波佐見焼きの歴史を紡いできた企業の大規模なプロジェクトが始動していた。

「これまでにないブッフェの形を作りたかった」

2024年11月27日、波佐見町に新たなブッフェレストラン「御堂舎(みどうや)」がオープンした。

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黒を基調としたモダンで落ち着いた雰囲気の店内では、旬の食材を使用した約35種類のメニューを波佐見焼きの器で楽しむことができる。

レストランは90分制のブッフェ形式。波佐見で昔から食べられている「押し寿司」をモチーフにサーモンやいくらなどを乗せ現代風にアレンジした郷土料理をはじめ、波佐見・鬼木郷の棚田米を使ったごはんや味噌汁など、波佐見の魅力を目で舌で味わうことができる。

接客をする店のオーナー・橋口聖さん

店のオーナー橋口聖さんは「自分があったらいいなと思うブッフェを作った。ありきたりなものではなく、ブッフェには珍しいその場で炭火で焼くつくねや鶏肉のおいしさを存分に味わってほしい」と話す。

ちりばめられた「窯元」らしさ

オープンから約1カ月。取材した日は平日にも関わらず県内外から多くの人が訪れていて、既に人気スポットとなっていた。

黒を基調にした店内 

その人気の裏には400年を超える歴史を持つ波佐見焼きを支えてきた人たちの強い思いがある。建物はもともと約90年の歴史を持つ町内の窯元・高山陶器の先代社長・高塚英治氏の住宅だった築100年の古民家をリノベーションしたものだ。(※高ははしご高)

柱や梁は古民家のものを再利用している

梁や柱は古民家のものを再利用。経営者が変わっても「高山」だった証は店内の随所に残されている。

壁の一部には焼き物を運ぶ際に使う「皿板」が

焼き物を運ぶ際に使う「皿板」は壁の一部やテーブルなどに。また床には窯の中で焼き物を焼く時に使う「棚板」が再利用されていたり、敷地内から出土した昔の茶碗のかけらは店内の装飾として使われていて、モダンな空間の中にも「歴史」を感じることができる。

登り窯をイメージしたピザ窯

さらにはレストランのすぐ横には焼き物の町らしく登り窯をイメージしたピザ窯が設置され、出来立ての本格的な味を楽しむことができる。

五感で楽しめる『商社×窯元』の大規模プロジェクト始動

3年前に「株式会社 高山陶器」(高ははしご高)から事業を受け継いだ「西海陶器」が、2023年から大規模なプロジェクトを始動。「高山」の『窯元』としての歴史と伝統を守りながら、西海陶器の『商社』として培ってきたノウハウを活かし、時代に合わせて様々な変化を遂げてきた波佐見焼きの新たな取り組みが始まった。

敷地内には焼き物の町のシンボルとも言えるレンガ造りの煙突が残されている

『波佐見をもっと知ってもらい、新たな観光スポットに』との思いから、敷地内にはレストランだけでない、様々な仕掛けがある。

レストランのすぐ隣には「体験工房」が併設

約3000平米ある敷地内には、2025年4月稼働予定の焼き物工場の建設が進められている。

建物の一部には宿泊施設(シングルルーム・ツインルームの5部屋)

他にも、レストランのすぐ横にはろくろや絵付け体験ができる「体験工房」(2025年1月オープン予定※すでにある工場見学や絵付け体験は随時受付)やレストランの一部は民泊ができる「宿泊施設」が併設されている(オープン日未定)。

西海陶器 児玉賢太郎代表取締役社長

西海陶器の児玉賢太郎代表取締役社長は、「焼き物をどういった場所でどういう人がどういう思いで作っているかを皆さんに知ってもらいたい」と語り、「波佐見に来てもらって体で感じられる場所になったら」と期待を寄せている。

すでにある工場内の見学も随時可能で、焼き物の現場を間近で見ることもできる場所は、単なる器を買いに来るだけでなく、五感で波佐見を体感できる新たな観光スポット「御堂(みどう)MIDOU」として今後注目されそうだ。

(テレビ長崎)

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