福島県浪江町に本格的なフランス料理店「ジョワイストロナミエ」(同町権現堂)が18日にオープンする。営むのは東京で半世紀の歴史を持つ「ビストロ・ダルブル」(渋谷区恵比寿南1)のオーナー、中西大輔さん(49)とシェフの無藤(むとう)哲弥さん(50)。「ここから地元の魅力のある食材を世界に発信しながら、若い人材を育てて被災地を盛り立てたい」と意気込む。
同店は1974年創業。2人は以前から全国各地の食材を求めて生産者を訪ね歩いていた。東日本大震災以降は東北に力を入れ、特に三陸のホヤを活用し、殻を使ったビスクなどホヤづくしのフルコースは評判を集めた。新型コロナウイルス下では、東北の食の復興に取り組む一般社団法人「東の食の会」(東京)とともに「おうち鍋セット」を商品開発、ネット通販した。
浪江町は2021年に初めて訪れたが、全町避難から17年に避難指示が解除されたばかりのJR駅に降り立つと、更地が広がり人影はなく「こんな景色が現実にあるのかとショックを受けた」(無藤さん)という。その中で、移住者も加わって意欲的に取り組む生産者らが質の高い食材を生み出していることを知り「このパワーやわくわく感を伝えたい」と突き動かされた。
町の中心地でラーメン店だった空き店舗をリノベーションし、店名はフランス語で「楽しい」の意味の「ジョワイユ―」と「ビストロ」を合わせて名付けた。地元食材の料理を味わう楽しさを、東京・恵比寿との2拠点による相乗効果で発信することを目指す。コーワキングスペースとしても活用して「店をハブに人が集まり、浪江でもビジネスが成立するというモデルを作りたい」と意気込む。
6月6日にはお披露目のパーティーが同店であり、親交のある生産者らが集まって本格的なフランス料理に舌鼓を打った。浪江で相馬野馬追(のまおい)の馬の堆肥(たいひ)を活用してニンニクを栽培している吉田さやかさん(37)は「被災地が震災からここまで力強く進んでこられたのは食の力があってこそ。それをお皿の上で表現する機会が地元で増えたのはすごくうれしい」。鮫川村でジャージー牛を育てる清水奈々さん(36)は「無藤シェフは食材を大事に扱ってくれる。地域をつないでくれる場所がこの浪江にできて、希望を感じます」と笑顔だった。
問い合わせは同店(0240・23・5773)へ。【錦織祐一】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。