京野菜の代表格「九条ねぎ」。

関西にいると一度は口にしたことがあると思いますが、今、農家の方々が深刻な被害に悩まされています。被害の実態を取材しました。


■甘みが強く歯ごたえのいい 京都の伝統野菜「九条ねぎ」

京の伝統野菜「九条ねぎ」。平安時代の京都・九条付近で良質なネギが栽培されていたことから、「九条ねぎ」と呼ばれるようになったそうです。

嵐山にあるうどん店は、店の看板メニューに九条ねぎをふんだんに使っています。

【自家製麺新渡月 木村健人さん】「だしと一緒に炊く。他のネギと比べて甘みが強くて、歯切れも良いので。シャキシャキ感を残しつつ、ふんわりとしたネギの甘みを感じられるように調理してます」

出来上がったのは鴨と九条ねぎのうどん。

そのお味はもちろん…
【記者リポート】「歯ごたえがシャキシャキしていて、かむたびにネギの甘みを感じます。京都のだしとめんと絡んでおいしい」

甘みが強く歯ごたえもいい九条ねぎは、普通のネギに比べて収穫量が少なく、貴重な品だということです。

【自家製麺新渡月 木村健人さん】「夏場が出回りづらいのかなって印象ある。月100キロ使うけど、仕入れ先探して工面して仕入れている。農家さんに直接お願いして、育てといてほしいと」

■犯人は同業者か 繰り返し狙われる農家は3トンもの被害

今は料理店も仕入れが難しくなる夏場の時期。
その貴重な九条ねぎをめぐり、事件が起きました。

九条ねぎ300キロが窃盗されたのです。

【記者リポート】「こちらの畑で九条ねぎが盗難されました。このように根元からきれいにカットされているのが分かります」

京都府久御山町にある農家の畑から8日、およそ300キロの九条ねぎが一晩で姿を消しました。

警察によると時価総額9万円程になるということです。

【九条ねぎの窃盗被害に遭った 佐野武史さん(63)】「うちの従業員がしたのと同じような刈り方。同業者じゃないけど、ネギに関係のある人、そういう人がやっていると思いますけど」

実はこちらの農家では、ことし2月にもネギ窃盗の被害にあっていました。

その時はなんと3トンもの被害だったということで、それを機に防犯カメラも設置したということですが、今回、犯人の姿は映っていなかったということです。

【九条ねぎの窃盗被害に遭った 佐野武史さん(63)】「ほぼ同業者だと思っているので。3月に種を植えて、それがいま収穫ですよね。それだけ手間がかかっているのは、向こうもよく分かっている話の中で。勝手に持って行って、商売するわけやから、どういう神経なのかなと」

JAによるとことし5月以降、久御山町や八幡市の農家で、少なくとも4件の窃盗事件が発生しているということです。

■“苗”も盗難被害 背景には厳しい暑さ?

九条ねぎの栽培だけでなく、加工や商品販売も手掛けるこちらの農家では、“育ったネギではない物”が盗まれたといいます。

【こと京都株式会社 池島孝将さん(28)】「植え付けする前の苗ですね。(苗を植えたシート)6枚ぐらい盗難被害に遭いました。作業してる最中に横に車が来て、苗を取って逃げた。当時は作業していたのが、外国人の技能実習生だった。恐らく日本語通じないであろうというのを分かった上で盗んだ」

その後、育てる必要のある苗を盗んでいったというのです。

対策といっても、広大な敷地で栽培するため、全ての畑をカバーするのは難しいのが現実です。


事件の背景には何があるのか。

このエリアの九条ねぎ農家を支援する、JAの担当者に話を聞きました。

【JA京都やましろ辻尾仁思さん】「一回で取る量が、何百キロっていう単位なんで(個人で)食べないですもんね、そんなにたくさん。業者さんであったり、そういう売り口がちゃんとある方の犯行じゃないと、一般の人が盗ったところでさばけないと思います。(Q.暑さ・機構の変化で栽培しにくい?)毎年やっぱり暑くなると、どうしても作りにくくなってるんで、もう例年9月、10月にネギが不足するっていうのはずっと続いてますね」

厳しい気候の中、農家が苦労して育て、やっと収穫の時期を迎えた貴重な九条ねぎを盗む卑劣な犯行。

警察は周辺で起きている九条ねぎの窃盗は同一犯の可能性もあるとみて捜査を進めています。

■相次ぐ農作物の盗難 犯人検挙は難しい…? 行政は防犯カメラの設置など補助金を

九条ねぎ300キロの盗難被害に遭った農家の佐野さんは「ほぼ同業者だと思っている。どういう神経なのか…」と悲しみを通り越してあきれの境地だということでした。

そして農産物の盗難被害は、ネギだけではなく、キャベツや白菜の野菜やモモ、さくらんぼ、ブドウやイチゴといったさまざまな品目に及ぶということです。

各地のブランド農産物がありますから、結構狙われやすいのかもしれません。

犯人検挙は難しいということですが、農作物の盗難被害のおよそ9割が未解決、または不明のまま終わっているという現状があります。ただ、分かっていることとしては、農産物の窃盗犯や外国人である場合もあるということです。

盗難被害の対策はどのようにしていけばいいのでしょうか。

【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「国も防犯カメラの設置やパトロールの強化を呼びかけていますが、やっぱり規模の大きくない事業者さんだと、自費で設置するのはなかなか難しいと思います。なのでぜひ、可能な限りで国や自治体の支援も考えていただきたいと思いますし、実際、愛知県、山形県や長野県では補助制度あります。こういった制度を使って、ドローンでパトロールを実施されているところもあるので、もしこ制度が進めば、このような被害の抑止になるかもしれないです」

前尼崎市長を経験しているの稲村和美さんは「まずは犯人検挙につながるよう、行政が支援を」と話します。

【前尼崎市長 稲村和美さん】「犯人が検挙されるっていうのがすごく重要だと思うんですね。そのためには、カメラの有効性というのがある思うので。実は尼崎でもひったくりを撲滅しようという取り組みをした時に、付けたり外したりできる可動式のカメラを市で何台か導入をして、ひったくりが集中的に起きたところに、その期間カメラをつけて警察と連携するという取り組みをしました。なので、いろんな被害が発生する中で、予算上の費用対効果なども考えながら、いろんな工夫で犯人検挙につながるような取り組みを、農家さんや自治体、警察、みんなが協力して進めていく必要があるんじゃないかなと」

行政としてできることにも限りはありますよね。

【前尼崎市長 稲村和美さん】「そうですね。例えば万引に苦しんでるスーパーの防犯カメラも全部補助するとか、なかなかそういうふうにはいかないと思うんですけれども、今回のように『みんなで伝統野菜を守っていこう』とか、取り組みがあるときに、集中的にカメラを設置できるようにするとかですね。あとパトロールも地域で協力してやるとか、そういったことは考えられるのかなと思います」

農家さんにとっては大変つらいですから、対策も求められます。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月10日放送)

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