旧優生保護法下で不妊手術を強制されたとして、東京都の女性が国に賠償を求めた訴訟は31日、東京地裁(片山健裁判長)で和解が成立した。国の賠償責任を認めた最高裁判決を受けたもので、一連の訴訟で和解が成立したのは初めて。

代理人弁護士によると、国が慰謝料など1650万円を支払う内容。謝罪の文言については関係省庁との調整に時間を要するとして、今回の和解条項には盛り込まれなかったという。

訴状などによると、原告の西スミ子さん(77)は脳性まひがあり、10代のときに十分な説明のないまま子宮を摘出された。2019年に成立した救済法に基づいて一時金320万円を受け取ったが、被害回復には不十分として22年に提訴した。

強制不妊を巡る訴訟は18年以降、全国で39人が起こした。最高裁大法廷は7月3日、先行した5件の訴訟の判決で、旧優生保護法の規定は違憲と指摘。不法行為から20年で賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」として国の賠償責任を認定し、1人あたり最大1650万円の賠償を命じた判決が確定した。

岸田文雄首相は最高裁判決を受け、被害者らと面会して謝罪。係争中の訴訟については除斥期間の適用の主張を取り下げ、和解をめざす方針を示していた。政府や与野党は被害者の早期補償の実現に向け、訴訟を起こさなくても救済できる制度の検討も進めている。

和解を受け、西さんは「きょうはとてもうれしい。一生懸命生きていこうと思う」と語った。代理人の関哉直人弁護士は「西さんが元気なうちに解決するため、国や裁判所が一緒の方向を向くことができた。今後示される基本合意を踏まえ、各地の訴訟も和解となっていくだろう」と期待を込めた。

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