柔道男子81キロ級で金メダルを獲得した永瀬=中尾悠希撮影

柔道男子81キロ級の永瀬貴規選手(30)が30日、パリで頂点に立ち連覇を果たした。メダル獲得は3大会連続。近くで見てきた家族や恩師は、長く一線で活躍する秘訣は「おごらないこと」だと口をそろえる。新たな目標に向かったこの3年間はスランプも味わったが、初心に戻って大舞台に臨み、躍動した。

前回の東京五輪で優勝後、地元の長崎に帰省すると、行く先々で「次はパリだね」と声をかけられた。ほとんど休む間もなく練習を再開した。

長崎日大高の恩師・松本太一さん(44)は「地道に積み上げてきたスタイルなので、休めば衰えるのが分かっていたのだろう」と推し量り、「変わらず練習を続けることができるのが永瀬の長所だと思う」と話す。

ただ国際大会でなかなか優勝できず、結果が振るわなかった。母、小由利さんは「とにかく次だね」と励まし続けた。パリ五輪代表には内定したものの、松本さんは「最近の試合を見ててもつまらないし、つらそうだ」と伝えた。期待を背負うあまり、柔道が小さくなったように見えたからだ。

昨年末、母校での五輪壮行式に戻った永瀬選手は、後輩と同じメニューで汗をかいた。「ごちゃごちゃ言うよりも、その方が良いと思って」。松本さんの計らいだった。功を奏したのか、強さが戻った。

母校は卒業後も永瀬選手が大事にしている場所だ。新型コロナウイルス禍で試合ができなくなったときは「永瀬杯」と銘打って子ども向けの大会を主催。「自分が何か役に立つのなら」と毎年のように続け、「初心に返り、子どもに元気をもらえる」と意義を語る。

「永瀬の影響で、最近の生徒はオリンピックに出たいとか、日本一になりたいと言うようになった」と松本さん。これからも地元の憧れの存在だ。(共同)

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