知床の遊覧船が沈没した事故で、運航会社の社長が業務上過失致死などの疑いで逮捕されました。

2022年、北海道・知床沖で観光船が沈没し、乗客・乗員20人が死亡、6人が行方不明になった事故で、遊覧船を運航していた会社の社長・桂田精一容疑者(61)が海上保安庁に逮捕されました。

桂田容疑者は2022年4月23日、観光船に乗客を乗せて知床半島往復コースを運航する際、運航管理者等として船及び乗客・乗員の安全を確保すべき義務があったのに、これを怠った結果、沈没させ乗客・乗員を死亡させたとして、業務上過失往来危険と業務上過失致死の疑いが持たれています。

20人が死亡、6人が行方不明になった知床の観光船沈没事故が、今回、大きく動きました。
元埼玉県警捜査1課で業務上過失致死事件なども担当したことのある佐々木成三氏と見ていきます。

──発生から2年以上がたって、なぜ今、社長の逮捕になった?

元埼玉県警・佐々木成三氏:
この沈没した原因が、はたして船の故障なのか、人為的なミスなのか、はたまた気象現象に起因する事故なのか。こういったことは沈没した船を引き揚げて、その船の検証や様々な専門家から意見も聴取しなければいけないという中で、かなりの捜査項目があったと思います。
その中で立証するのに時間を要したということだと思います。

──天候なども含めていろいろな調査が必要だということ?

元埼玉県警・佐々木成三氏:
そうですね。その天候で船を出すことに危険があったのか否か。これに関しては、専門家などからの意見聴取も必要だったということですね。

逮捕までの2年以上の間に何があったのか、時系列で見ていきます。

2022年4月23日に船が沈没しました。
4月27日に桂田社長が会見をし、土下座をして謝罪しました。
その翌月、5月に海底から船「KAZU I」を引き揚げました。
そして1年たって2023年9月7日に、国の運輸安全委員会が調査をして最終報告書を公表しました。
そして2024年7月3日に乗客の家族らが賠償約15億円を求めて提訴をしました。

なぜここに来て捜査が大きく進展したのか、その詳細について、18日午後2時に第1管区海上保安本部が会見を行いました。

まず、2年以上たっての逮捕の理由については、
「証拠隠滅の可能性があり得るので逮捕しました」と述べました。
「証拠隠滅・逃亡の可能性があるのか?」という質問には「詳細は答えられない」としています。
また、「容疑者は容疑を認めているか?」については、「認否については差し控える」といった内容になっています。

そして沈没の過程については、「天候の悪化で船体が大きく揺れる中、波の一部がハッチから船内に浸入。海水で満たされ沈没と推定される」と発言がありました。

──“証拠隠滅の恐れ”について、2年以上たっている中でどういう意味か?

元埼玉県警・佐々木成三氏:
事案の大きさから、逮捕以降に証拠が出る可能性も十分考えられます。
その中で証拠隠滅の可能性という中で、一般論としては、証拠を隠す以外にも自殺の恐れということも一般論としては証拠隠滅になるんです。
これに関しては、事態の大きさからして、逮捕という形をとって事実を明らかにしていくという姿勢をとったんだと思います。

今回、運航会社の社長が逮捕された点。
事件から5日後に行われた、土下座で行った謝罪に関して、安全管理体制や自らの責任について、次のように話をしています。

知床遊覧船 社長・桂田容疑者(2022年4月):
海が荒れるようであれば引き返す“条件付き運航”を(船長の)豊田氏と打ち合わせ、当日の出港を決定した。(Q.“条件付き運航”から引き返す基準は?)船長判断なので、ございません。(Q.責任を押しつけているのでは?)責任を押しつけているということではなくて、ちょっと頼りすぎていたというところです。(Q.4月23日、早いタイミングで出港を決めたのは?)最終的に判断は私であります。安全管理は行き届いていなかったと思う。

最後の安全管理というところをひも付いてきますが、2023年9月に出された国の運輸安全委員会の最終報告書によりますと、運航についての知識がないのに、社長は「安全統括管理者」の立場に就いていました。
この「安全管理体制が整備されていなかったこと」これが事故原因の1つであると指摘をしています。

──社長が安全統括管理者という立場である一方で船には乗っていなかったわけだが、なぜ逮捕に至る?

元埼玉県警・佐々木成三氏:
安全管理体制が一番の不備だったということが、社長の因果関係が大きかったということだと思います。
先ほども言いましたが、当時の天候で出航は誰が決めたのか。
万が一事故があった時に、その基準にかなりあいまいさがあったことと、事故が発生した時の回避措置、こういったものがどういうふうに決まっていたのか、これが不備が大きくあったということで、過失の割合が社長にも大きくあったということだと思います。

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