岩手県の居酒屋で閉店後にビールを要求し暴れる男の様子を店主がSNSに投稿し、同業者への注意喚起を図った。店主は、男に動画投稿の合意を得ているが、弁護士によると、同意なしでの無断投稿は、名誉毀損やプライバシー侵害のリスクがあると指摘している。

閉店後にビールを要求する男

あおり運転や車をぶつけられた、さらには暴力を振るわれた際の映像をSNSに投稿するケースが増えている。今回は、この「投稿」についてお伝えする。

ビールを要求する年配の男性
この記事の画像(12枚)

岩手・盛岡市「炭火焼 鳥八 分店」で19日、店主が「お客さん。マジでやめてください、ほんと」と伝えたにも関わらず、「ビール」とビールを要求する男の姿が撮影された。

店はすでに閉店後だったため、男の要求に対して、店主の渡邊さんが「いやいやいや」と断ると、男は思わぬ行動に出た。

男は「うるせえ!!ビールだ」と店員に怒鳴りつけたのだ。「いやビールは出せないです。店終わりましたもん」と断ると、男は「もういい!」と言って、カウンターの上に片付けられていたイスを次々と落としていった。

SNS投稿された動画

そして、男は信じられない行動に出た。店主が「名前と連絡先を教えてもらっていいですか?」と聞くと、男は素手やカバンで何度も店主を殴打したのだ。店のスタッフが110番通報し、男は駆けつけた警察官に引き渡された。

店の渡邊オーナーは、暴行の一部始終をSNSに投稿し、「もし皆さんのお店に来たら入れないほうが良いよと、情報共有の意味合いを込めて、SNSに反映した」と話し、投稿は同業者に注意を呼び掛けるためだったという。

その後渡邊さんは、警察署で男と面会したが、そのときの態度にがく然としたという。

渡邊オーナーは、「会っても謝らない。自分のやったこと覚えてますか?って言ったら『わからねえなあ』とあの感じで言う。『何すればいいのや』とか、反省してないのかなと」と男の様子を語った。

男との面会の際に交わした念書では、「店の付近には極力現れない」ことや「投稿した動画は消さない」ことを確認したという。

名誉毀損、プライバシー侵害で訴えられる可能性も

一方、ネット問題に詳しい弁護士は、SNS投稿に潜むあるリスクを指摘している。

弁護士法人橋本綜合法律事務所の溝上宏司弁護士は、「『犯罪の現場だからいいだろう』という考え方も確かにあると思うが、法律的な観点から言うと、相手方が加害者だといっても本人の同意なく動画としてアップしてしまうと、名誉毀損やプライバシー侵害という問題がどうしてもでてきてしまう。今回は、消さないという前提で合意書を交わしているのであれば、クリアできたとは思います」と話している。

今回のケースは、「動画を消さない」ことで相手と同意してるが、仮に同意がなければ「名誉毀損」で訴えられる可能性も否定できないという。

司法の手続きなく動画を公開することは、相手に社会的制裁を加えることにもつながるため、警察に相談することが道理だと言えそうだ。

スマートフォンやドライブレコーダーの普及で、増えるSNSへの動画投稿だが、トラブルを防ぐ対応を考えていくことが必要だ。
(「イット!」 9月26日放送より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(12枚)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。