7月の大雨は酒田市の景勝地にも被害を及ぼした。姿が変わってしまったところもあるが、「地域の宝」を次につなごうと地元の人たちが奮闘している。
酒田市下黒川にある落差約15メートルの「不動滝」。
開運出世の滝とも呼ばれ、滝をまつる御滝神社は受験生や門出を迎える人たちが多く訪れる。
しかし7月の大雨で滝がはん濫し、増水により目の前の道が陥没した。滝そのものに被害はなかったが、安土桃山時代以前に建立された歴史ある社殿も大きく壊れた。
(御滝神社・阿曽右貢宮司)
「初めてです。頭が真っ白になった。この世の世界じゃないと思った」
そんななか奇跡が…。
大量の水が流れ込んだ社殿の中から、ご神体が無事のまま見つかったのだ。
(御滝神社・阿曽右貢宮司)
「神ががかり的に残るべくして残ったと捉えている。大事に次の世代につないでいかないといけない。それが最後の仕事になるんじゃないかなと思っている」
陥没した道路は市の協力を得て仮復旧の工事を行い、9月24日に通れるようになった。
ご神体は別の場所に移し壊れた社殿を一度撤去したが、阿曽宮司は「時間はかかっても再建させたい」と話す。
ご神体が残った奇跡の神社。
この日も「滝だけでも」と次々と参拝客が訪れた。
(御滝神社・阿曽右貢宮司)
「開運出世の滝もこれから紅葉が始まるので、益をいただいて行ってくれれば良いかなと思います」
そして大雨は升田地区にある名瀑「玉簾の滝」にも被害を及ぼした。
(升田地区自治会・池田善幸さん)
「全部流れてきた。ここに木の板がある。本当はこれが歩道としてここにあった」
駐車場から滝に向かう約350メートルの遊歩道。
はん濫した川の水が引いた後に訪れると、大量の土砂や流木が残っていたという。
(酒田市升田地区自治会・池田善幸さん)
「流木が橋に引っかかってしまい、人が通れる状況ではなかった」
この滝を守って来た池田さんたち地元自治会は、大雨から10日後に仮復旧に取り掛かった。
チェーンソーを使って流木を切って取り除き、杭を打って安全に歩けるようにした。
地元だけでなく全国にもファンが多いという玉簾の滝には、大雨の被害が及んだことを知らずに訪れる人もいる。
(酒田市升田地区自治会・池田善幸さん)
「ここが川になってしまった。まだ仮復旧ですが…」
(東京から)
「ラッキーな時に来られた。ありがとうございます」
(酒田市升田地区自治会・池田善幸さん)
「あそこに行っても『行けなかった』『だめだった』という噂が広がると、観光地としては命取り。早くお客さんに安心してここを見てもらい、体験してもらうことが必要と思い復旧した」
玉簾の滝は県内随一の落差63メートルの直瀑。
しかし見る人を圧倒してきた滝そのものも大雨で姿を変えた。
(酒田市升田地区自治会・池田善幸さん)
「見ていただくとわかる通り、上の落ちる所が2メートルくらい岩が削れたみたい。形が少し変わった」
増水で削り取られた滝の落ち口。
流れ落ちた土砂が滝つぼを2~3メートル埋めてしまった。
「少しでも元の姿を」と、池田さんたちは重機を使って滝つぼの土砂を撤去した。一方で「自然は姿を変えていくもの」という思いも持ち合わせている。
(酒田市升田地区自治会・池田善幸さん)
「起きてしまったので“これからどうするか”ということが大事。新たな玉簾の滝、観光地を目指していきたい」
スギ林に囲まれた圧巻の自然美はこれからも…。
池田さんたちは一緒に流されてしまった滝の周りのライトを設営し直し、秋の紅葉シーズンにライトアップを行いたいと考えている。
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