検察の控訴断念の発表を受け、記者会見で喜びを語る袴田秀子さん(左)と小川秀世・弁護団事務局長。置かれた写真は故西嶋勝彦・弁護団長=静岡市葵区で2024年10月8日午後6時38分、丹野恒一撮影

 1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ死刑が確定した袴田巌さん(88)に対するやり直しの裁判(再審)の静岡地裁・無罪判決(9月26日)について、検察当局は8日、控訴を断念すると発表した。有識者からは法曹界全体が問題点を解明する必要が指摘された。

元東京高裁部総括判事の門野博弁護士の話

 静岡地裁判決は、無罪の結論はもちろん、捜査機関による証拠の「三つの捏造(ねつぞう)」認定も状況証拠に基づき説得力があった。無罪が覆る可能性は低く、検察の控訴断念は正当な判断だ。

 確定審の静岡地裁公判中に「5点の衣類」が出てきた段階で、裁判所が十分な審理をすればその時点で無罪が出せたかもしれない。2014年の再審開始決定に対し、検察が不服を申し立てたため、再審公判までさらに9年を要した。証拠の開示も遅れ、審理の長期化に対する検証が必要だ。検事総長談話は、無罪判決を「到底承服できないもの」としたが、検察自身による検証が自己弁護にとどまらないことを望む。

 日本の刑事司法の問題が詰まった事件だ。法曹界全体が大いに反省して問題点を解明し、今後の方策を検討する必要がある。

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