伊藤詩織さん監督のドキュメンタリー映画で、許諾が必要な映像や音声の無断使用があったと指摘する元代理人弁護士=東京都内で2024年10月21日午前11時1分、菅野蘭撮影

 性暴力被害を受けたと公表したジャーナリスト、伊藤詩織さんが初監督を務めたドキュメンタリー映画を巡り、伊藤さんの元代理人弁護士らが21日、「承諾が必要な映像や音声が無断使用されている」として映画の内容の変更を求めた。

 「証拠の少ない性被害での証言や映像提供者がいなくなり、同様の事件で被害者救済ができなくなる」と訴えている。

 映画は、伊藤さんが2017年に被害を公表してから、自ら性暴力の問題を調査した一連の活動をドキュメンタリー化。既に海外の映画祭で上映されている。

 記者会見を開いた西広陽子弁護士によると、無断使用されたのは、裁判以外の目的で使用しないとホテル側と誓約して提供を受けた防犯カメラの映像だという。

 伊藤さんが被害を受けた現場のホテルへ加害男性と入る様子が映っており、合意のない性行為だったと裏付ける証拠の一つとして裁判所に提出された。

 映画化に際して、伊藤さんと弁護士の間で、承諾を得ていない映像や音声を使わないよう合意したが、伊藤さん側の無断使用が確認されたという。

 他にも刑事事件の捜査の問題を告発した捜査員の音声が加工せずに盛り込まれていたとしている。

 西広弁護士は伊藤さんが性暴力被害を受けたとして起こした損害賠償訴訟(伊藤さん側の勝訴が確定)の代理人弁護士。

 これまでに承諾を得るよう伊藤さんに働きかけたが受け入れられず、公表に踏み切ったと説明した。

 「上映に至った経緯は、本人の意思を無視する性暴力の構図と変わらない。彼女なりの正義の表し方だと思うが、ルールを守ってほしい」と訴えた。

 伊藤さん側は「提供された映像をそのまま使用しているわけではなく、プライバシーに配慮して作り直したものであり、会見内容は事実と違う」とコメントした。【菅野蘭】

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