障害者アートの先駆的な取り組みで知られる社会福祉法人グロー(滋賀県近江八幡市)元理事長の北岡賢剛氏(66)から性暴力を受けたなどとして、元職員の女性ら2人が、北岡氏とグローに計約5200万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(野口宣大裁判長)は24日の判決で、長年にわたって性加害行為があったことを認め、北岡氏とグローに計660万円の支払いを命じた。
判決では、北岡氏は2012~18年、グローの前身団体で職員などとして働いていた原告の女性(45)に、尻や胸を触ったりわいせつな内容のメールを送ったりする行為を繰り返したと認定。また、明確な同意を得ないままホテルで上半身裸のこの女性と過ごしたとした。
14~15年には、グロー元職員の原告女性(36)をホテルでベッドに押し倒し、胸をなめるなどの性加害行為を2回行ったと認めた。否認する北岡氏の主張は退けた。
原告側は、不法行為から3年で損害賠償請求権がなくなる「消滅時効」について、上下関係に基づく性被害は長期間訴えられないなどとして、成立しないと主張。判決はこの点は認めず、時効がかからない期間に被害を受けたと認定された前身団体元職員の女性に対する賠償だけを認めた。
判決ではグローに対しては、ハラスメント防止規定がない上に防止講習を実施しておらず、安全配慮義務違反があったと判断。元職員の女性への440万円の支払いを命じた。
判決後の記者会見で、元職員の女性は「性暴力やハラスメントが認定されて安堵(あんど)した」と述べた。ただ、時効で一部請求が認められなかった点は不十分だとした。
北岡氏の代理人弁護士は「コメントを出す予定はない」とし、グローの担当者は、見解をウェブサイトで後日公表するとした。
グローは滋賀県内で障害者福祉サービス事業所などを運営。北岡氏は厚生労働省社会保障審議会障害者部会の委員を務めていたが、女性らの提訴後に辞任した。【塩田彩】
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