職種を限定する労使合意があれば一方的に配置転換を命ずることはできないとした最高裁判決の意義を語る原告の男性(右)と代理人=東京都千代田区の司法記者クラブで2024年4月26日午後4時52分、井口慎太郎撮影

 勤務する職種を限定する労使合意があった場合に、雇用者が労働者を配置転換できるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、「労働者の同意なしに、配置転換は命令できない」との初判断を示した。原告の労働者側の主張を退けた2審・大阪高裁判決(2022年11月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。

 1、2審判決によると、原告の男性は01年から滋賀県福祉用具センターに勤務し、主任技師として福祉用具の製作や改造を担当。ところが19年に事前の打診なく、総務課への異動を命じられ、違法な配置転換だとして損害賠償を求める訴訟を起こした。

 1審・京都地裁判決(22年4月)は、男性とセンター側の間に技術者として職種を限定して就労させる暗黙の合意があったと言及。ただし、センター側では用具の製作・改造の仕事の需要が減少しており、センター側は男性の解雇を避けるために配置転換を命令したとして、違法性はないと判断した。2審も支持した。

 これに対して小法廷は、男性から同意を得ていない以上、センター側に配置転換を命令する権限はないと指摘。その上で、センター側に賠償責任が生じるか、さらに審理を尽くすべきだとした。

 男性の代理人弁護士は判決後に記者会見し、「誇りを持って長くやってきた専門職から、全く別の仕事を命じられることに歯止めがかかる」と評価した。

 早稲田大の水町勇一郎教授(労働法)は「妥当な判決だ。従業員の職務を明確に定めた『ジョブ型雇用』が日本でも増える中、同種のトラブルは今後多くなることが予想され、影響は大きい。雇用者は労働者の意思を丁寧に確認していく必要がある」と話した。【巽賢司、井口慎太郎】

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