東京都新宿区のマンション地下駐車場の工事現場で2021年4月、消火設備が突然作動し、放出された二酸化炭素(CO2)を吸った男性作業員4人が死亡した事故で、警視庁捜査1課は7日にも、必要な安全対策を怠ったとして、工事の元請け会社で現場責任者だった男性(60)を業務上過失致死傷容疑で書類送検する。捜査関係者への取材で判明した。
事故は21年4月15日午後4時半ごろ、新宿区下落合4のマンション地下1階の機械式駐車場で発生。作業員が天井板を張り替え、消火設備の感知器を付け直していた際、設備が作動して二酸化炭素が放出された。
捜査関係者によると、現場責任者だった男性は作業前に二酸化炭素の放出を手動設定に切り替えたり、放出を防ぐ弁を閉めたりするなどの安全対策を怠り、当時20~50代の男性作業員4人を二酸化炭素中毒で死亡させ、20代だった男性1人を軽症にさせた疑いがある。
男性は警視庁に「起動スイッチを押さなければ、消火設備は作動しないと思った」と説明したという。
駐車場の天井には、消火設備の感知器が12カ所あり、うち8カ所は熱、4カ所は煙に反応する仕組みだった。感知器が熱と煙の両方を検知すると、火災が発生したとして、二酸化炭素を放出し、酸素濃度を下げて延焼を防ぐ構造になっていたという。
当時、死亡した作業員らは感知器を取り外し、天井板を交換後に再び取り付けていた。その際、作業員の手の熱に感知器が反応。さらに、煙の感知器の設置場所に、誤って熱の感知器を取り付けたため、こもった熱が煙と判断され、消火設備が作動したとみられる。
警視庁は、現場責任者だった男性が作業員らに、こういった消火設備の危険性を十分に伝えていなかったことも、事故につながった要因とみている。
二酸化炭素の放出で消火する設備による事故は、この事故も含め、20年12月~21年4月に3件発生した。総務省消防庁は23年4月、再発防止に向けた有識者検討会の議論を踏まえ、消防法施行規則を改正。二酸化炭素の放出を防ぐ弁の設置や、作業時には弁を閉めることなどを義務づけた。【岩崎歩、菅健吾、朝比奈由佳】
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