渡辺美希子さんが携わった作品を掲示しながら講演する母の達子さん(中央左)と兄の勇さん(中央右)=水戸市で2024年11月6日、西夏生撮影

 36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、命を落とした渡辺美希子さん(当時35歳)の母達子さん(74)と兄勇(いさむ)さん(45)=いずれも滋賀県=が6日、水戸市で講演した。犯罪被害者に対するカウンセリングの重要性や、理不尽な事件や事故を少しでも無くす社会の構築を訴えた。

 美希子さんは08年に入社。人気アニメ「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の美術監督を務めるなど、主に背景美術の担当者として活躍していた。

 勇さんは事件当初、妹を失った心の傷を認めたら生活に支障が出ると思い、滋賀県警から勧められたカウンセリングを受けなかった。すると、原因不明の微熱が続き、精神科で話を聞いてもらったところ、体調が回復したという。

 勇さんは当時の状況を「しんどいことを吐露することで、頭の整理ができた」と振り返り、「カウンセリングを断る人がいても、タイミングをみて再度勧めてみることで、助かる人も出てくるのでは」と話した。

 達子さんも最愛の娘を突然失い、パニック状態のまま生活していたという。過度のストレスの中で、カウンセリングを受け、少しずつ気持ちの整理が進んだという。

 事件を防ぐことはできなかったのか――。達子さんは「生きやすい社会は周りが作るもの。良い組織ができても、温かい空気がないと機能不全になる」と訴えかけた。

 講演会は約130人が参加。いばらき被害者支援センターが年に1度開催している。【西夏生】

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