リチウムイオン電池が使われている製品の事故が増えている。発火などの事故は2023年は397件と過去10年間で最多だった。電熱ウエアや充電式カイロなど暖が取れる製品にも多く使われており、冬本番を控え、消費者庁は誤った使い方による事故に注意するよう呼びかけている。

繰り返し充電できるリチウムイオン電池はスマートフォンやモバイルバッテリーなど様々な小型家電製品に使われている。利便性が高い半面、熱や衝撃に弱く、使い方を誤ると発煙や発火、異常発熱による火災ややけどなどの事故につながる。設計や品質管理が十分でない安価な製品での事故も報告されている。

製品評価技術基盤機構(NITE)に通知されたリチウムイオン電池を搭載した製品の事故は23年は前年比13.4%増の397件と過去10年で最多だった。製品別ではモバイルバッテリーが最も多かった。

近年は用途も多様化しており、電熱線を内蔵したベストやジャケット、手袋、靴の中敷きなど「暖が取れる製品」にも使われている。モバイルバッテリーを外付けできるタイプの製品もある。

消費者庁が国民生活センターと連携して運用する事故情報データバンクによると、リチウムイオン電池を使用する暖が取れる製品での事故は24年9月までの10年5カ月で68件発生している。このうちリチウムイオン電池が原因と考えられる事故は約半数の32件を占める。

暖が取れる製品の事故は20年度以降は年間10件前後発生するなど増加傾向にあり、11月〜2月の冬場に集中している。

商品別では電熱式のベストやジャケットなどの「電熱ウエア」が14件と最も多く、電熱グローブが11件と続く。具体的には「電熱ベストを着用中、バッテリーが異常に熱くなり脱いだところ、バッテリーが溶けていた」「電熱グローブとバッテリーを接続していたら、グローブの両親指付近から煙が出た」などの事例があった。

電熱式の靴の中敷きでは「スイッチを切ったまま使用していたところ発煙し、靴と靴下が溶け、やけどで救急搬送された」との事例もあった。

消費者庁は「落としたり、靴やポケットの中で強い圧力が加わったりすると内蔵されている電池が損傷し、発煙や破裂、発火する場合がある」と注意を呼びかけている。また就寝時に枕元や布団近くで充電すると、発火した際にやけどや火災につながる恐れがあるとして、充電時は周囲に可燃物を置かないよう求めている。

安全性が十分でない製品も存在する。モバイルバッテリーには通常、電圧を監視して過充電を防ぐ「保護回路基板」が備わっているが、国内には電圧の監視機能がない製品が一部で流通しているという。

そのため経済産業省はモバイルバッテリーの安全基準を見直し、24年12月28日から電圧監視の機能がないものは日本で製造したり、輸入したりすることが一切できなくなる。

リチウムイオン電池を使った製品の事故は世界的にも増加傾向にあり、経済協力開発機構(OECD)の加盟国は10月からリチウムイオン電池の安全性に関する共同啓発キャンペーンを実施している。

(藤田このり)

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