国立天文台や米サウスウエスト研究所などの国際研究チームは、太陽系外縁に存在する小天体群のさらに外側に、未知の天体群が存在する可能性があると発表した。米ハワイの「すばる望遠鏡」による観測で、従来の想定を超える数の新天体が分布していることを発見した。太陽系の成り立ちを解き明かす上で重要な手がかりになる。
太陽系のもっとも外側にある惑星である海王星軌道の外側には「カイパーベルト」と呼ばれる円盤状に分布する小天体群が存在する。太陽から30〜55天文単位(1天文単位は太陽から地球までの距離で約1億5000万キロメートル)の距離にあり、約46億年前に太陽系を形成したチリとガスからなる「星雲」の名残とされる。
すばる望遠鏡では2004年から、太陽系外縁の天体を観測する米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニューホライズンズ」の研究ミッションに協力し、探査機が接近通過できるカイパーベルトの天体を探してきた。24個の天体を発見したが、いずれも接近対象の候補にならず、ニューホライズンズは19年に別の望遠鏡が発見した小天体「アロコス」付近を通過した。
すばる望遠鏡は20年以降も観測を続け、23年までに239個の天体を発見した。分布を調べたところ、そのうち11個の天体がカイパーベルトの範囲の外側に位置していたことが分かった。大半が70〜90auに分布しており、カイパーベルトとの間には、天体が少ない分布の谷間も確認された。
太陽系のカイパーベルトは、系外の惑星系円盤と比べて小さいことが指摘されている。研究チームの一員で産業医科大学の吉田二美准教授は「原始太陽系の星雲が従来の想定より遠方まで広がっていたことを示唆する成果で、太陽系の形成過程を理解する上で重要な手がかりになる」と話した。
研究成果は査読前論文にまとめられ、米科学誌「プラネタリー・サイエンス・ジャーナル」に掲載される。
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