国連本部=米ニューヨークで2022年8月16日、隅俊之撮影

 各国が現行の地球温暖化対策を続けるだけでは、世界の平均気温は今世紀末までに産業革命前から3・1度上昇する可能性があるとの報告書を国連環境計画(UNEP)が24日公表した。国際社会は「1・5度上昇に抑える」という共通目標を掲げるが、UNEPは「数年以内に実現不可能になる恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 11月にアゼルバイジャンで開催される国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)では、こうした危機的な状況を踏まえ、世界の温暖化対策強化に向けた資金動員の進め方が議論の焦点になる。

 報告書によると、2030年を期限とする各国の温室効果ガス排出削減目標が達成できたとしても、2・6~2・8度上昇すると予測される。ただし、各国の今の対策のままでは目標達成は難しく、「3・1度という破滅的な気温上昇を招く」という。

 23年の世界全体の排出量(二酸化炭素換算)は571億トン(前年比1・3%増)で、過去最高を記録した。新型コロナウイルスの世界的流行前の10~19年は年平均0・8%増で、増加のペースが加速している。

 各国は25年2月までに新たな排出削減目標を国連に提出することが求められ、日本政府も現在、35年以降を期限とする目標の議論を進めている。UNEPによると、現行目標の継続では35年の世界の排出量は540億トン程度で、1・5度目標実現には年250億トンまで減らす必要があるという。

 報告書は1・5度目標は技術的には実現可能だと指摘。UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は「主要20カ国・地域(G20)、特に排出量の最も多い国々は重要な役割を果たす必要がある。COP29の議論を経て、今行動を強化し、30年までに1・5度目標達成の軌道に乗るよう全力を尽くしていこう」と訴えた。【山口智】

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