東京・明治神宮外苑の再開発事業で、三井不動産などの事業者は28日、再開発地区で樹木の伐採を始めた。再開発を巡っては大量の樹木が伐採されることから市民団体の反対の声が根強い。事業者は伐採樹木を減らす見直し案を東京都の審議会に報告。大きな異論が出なかったことから伐採に踏み切ったとみられる。
この日、神宮第2球場跡地の近くで樹木の伐採が報道陣に公開された。作業員らはチェーンソーを使い、ケヤキを伐採した。樹木を別の場所に移植する作業も公開した。近くには再開発に反対する市民団体が集まり、「伐採反対」などとシュプレヒコールを上げた。
伐採作業を見守った新宿区の男性会社員(41)は「見直し案は伐採本数を減らしただけで計画そのものは変わっていない。(神宮外苑に)超高層ビルを建てていいのかなど問題は残ったままだ。住民説明会で反対意見が出ても事業者はその声を聞こうとしない。伐採を強行するのは許せない」と話した。
事業は三井不動産のほか、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事が担う。再開発地区は国立競技場に隣接する約28・4ヘクタールで、老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えてそれぞれ建て替え、超高層ビル2棟を新設する。神宮外苑のシンボルである「4列のイチョウ並木」は保全されるが、他の樹木743本が伐採される予定だった。
事業は都の認可を受け、2023年3月から工事が始まったが、反対の声がやまず、都は同9月、事業者に樹木を保全するための具体的な方法を示すよう要請。これを受け、事業者は今年9月、伐採樹木を124本減らして619本とした上、イチョウ並木と新しい神宮球場との距離を、生育への悪影響が指摘されていた当初の約8メートルから約18・3メートルに引き離す見直し案を発表。今月21日に見直し案を都環境影響評価審議会に報告した。審議会で都の担当者は「今回の変更が環境に著しい影響を及ぼす恐れがあると認められない」と説明した。
小池百合子都知事は25日の定例記者会見で「都民の理解と共感を得られるように情報発信などにしっかり取り組んでほしい」と事業者に要望した。【島袋太輔、山下俊輔】
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