大気中にダイヤモンドの微粒子(エアロゾル)を年間500万トンまけば、地球を効果的に冷やせるとの試算を、スイス・チューリヒ工科大などの研究チームが発表した。論文では正確に算出していないが、研究代表者によると、地表温度を概算で1・6度下げる可能性があるという。
米科学誌サイエンスは、今世紀末までにダイヤモンドのエアロゾルを放出し続けた場合、約175兆ドル(約2・6京円)の費用がかかるとの別の研究を紹介している。
地球温暖化を緩和するため、成層圏にエアロゾルをまいて、太陽光をはね返して地球の冷却を狙う「太陽放射改変」という手法がある。過去の巨大火山の噴火後に実際に気温が下がったことも、これまでの研究で確認されている。
エアロゾルは二酸化硫黄(SO2)が有力で、大気中で雲を作る性質がある。一方、酸性雨やオゾン層の破壊、成層圏の温暖化による気候パターンの乱れを招くなどのリスクが指摘されている。
そこでチームは、エアロゾルが光を反射する特性などを取り入れた気候モデルを作成。SO2のほか、ダイヤモンドや酸化アルミニウムなど計7種の物質をそれぞれ年間500万トン、45年間放出したと仮定して影響を検証した。
その結果、150ナノメートル(ナノは10億分の1)のダイヤモンドのエアロゾルが、最も効率よく太陽光を反射させられることがわかった。酸性雨のリスクもなく、成層圏の温暖化も抑えられるという。
研究代表者のサンドロ・バッティオーニ氏は「温暖化の根本的な解決には温室効果ガスの削減や除去技術が必要だが、気候変動の見通しが非常に暗いことを考えれば、エアロゾル注入技術の研究は必要だ」とコメントした。
成果は10月7日付の米地球物理学連合の学術誌「ジオグラフィカル・リサーチ・レターズ」(https://doi.org/10.1029/2024GL110575)に掲載された。【寺町六花】
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