京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の池谷真准教授らは筋肉や靱帯などに骨ができてしまう難病「進行性骨化性線維異形成症」の仕組みの一端を解明した。患者由来のiPS細胞などを活用した研究で、発症初期に作られる特定のたんぱく質の働きを抑えると異常な骨の形成を軽減できた。治療薬の開発につながる可能性がある。
国が難病に指定する「進行性骨化性線維異形成症」の国内患者数は約80人とされる。特定の遺伝子に変異があると、骨の形成に関わるたんぱく質の働きが高まり、筋肉や靱帯などに骨ができる。進行すると手足の動きの悪化や呼吸障害などが現れる。有効な治療薬はない。
病気の発症初期に骨となる細胞が異常に増殖し、筋肉組織に侵入して腫れや熱など炎症反応を誘導する。研究チームは患者由来のiPS細胞を用いて、これまで詳細が不明だった細胞が異常に増殖する仕組みの解明を目指した。
解析の結果、「BMP9」と呼ばれるたんぱく質の働きによって、骨になる異常細胞の増殖が過剰に促されることが分かった。病気を再現したマウスを対象に遺伝子操作や抗体などを使ってBMP9の働きを抑えたところ、細胞増殖が軽減され、異常な骨の量を約8割減らせた。
池谷氏は「世界で初めて(病気の)初期段階で働く因子を捉えた成果だ」と説明する。今後はBMP9がどのような仕組みで細胞増殖を引き起こすのか詳細に調べる。骨化性線維異形成症に関わる因子は病気の進行状況によって変化するとされ、「進行状況に合わせた治療法の開発を目指す」(池谷氏)。
研究成果をまとめた論文は国際科学誌「エンボ・モレキュラー・メディシン」に掲載された。
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