トヨタのクルマづくりと言えば、カローラの哲学である「80点主義+α」が有名だ。しかしトヨタには、80点主義を大きく超える101点主義で作られたクルマがあった。それがハイラックスだ。現在もピックアップトラックとして大人気のハイラックス、その初代モデルを振り返っていこう。
文/佐々木 亘:写真/トヨタ
■超豪華な貨物モデルは101点以上のデキだ!
1968年に誕生したハイラックス。当時のカタログでは「すべてが101点主義の新1トントラック」と紹介されている。
スタイル・装備・性能など、全てにおいて100点満点に勝る101点主義で作られているのがハイラックスだ。
特に快適な室内装備と、高い安全性能が売りだった。輸出向けに製造されていることも、当時としては大きなセールスポイントであり、海外での悪条件(路面・気候)に耐えられるハイラックスは、抜群の耐久性を誇っている。
ハイラックスは「High Luxury」からきている造語であり、乗用車のような豪華さを持ち合わせる、実用性抜群のピックアップトラックという意味だ。貨物車らしくない、その豪華な装備を見ていこう。
■ハイラックスが誇る実用性抜群のアイディア装備
貨物モデルでありながら、運転席はドライバーの「部屋」という考えが、ハイラックスの核を作り出す。トラックでは例を見ない、超快適設計なのだ。
同クラスで初めて、ドアに曲面ガラスを使用し、3人が横並びに乗っても肩の周辺にゆとりが生まれる。さらにフロント・サイド・三角窓のガラスは、すべて熱吸収ガラスになっているというこだわり様だ。
シートはレザータッチで、トラックとしては初めての通気性発砲ビニールレザー(デラックスのみ)を採用した。シートの座面が長いのも、ハイラックスならでは。
室内空調も考えられており、グリル中央部にある外気導入口から入った新鮮な外気が、エンジンルームを通らずに直接室内へ入り込む。そしてBピラーに備えられたエキストラクターから外へ出るという仕組みだ。換気が自在に調整できるは、当時のクルマならではであろう。
また、ピックアップトラックとして大切な荷台にも、抜群のアイディアが詰め込まれている。
荷台に出てしまうタイヤハウス部分は、できるだけ小さくした上で、荷台奥とタイヤハウスの間には、ビール箱(1ダースの木製ケース)がすっぽり収まる空間(451mm)を作り出した。
荷台のスペースは2.65平方メートルと広く、床面地上高は690mmと低いのがハイラックスのセールスポイントでもある。
堅牢なシャシーや十分なパワーを持つエンジンを搭載するのは、ピックアップトラックとしてもちろんのこと、快適性や使い勝手に十二分の配慮をするのが、ハイラックスにおける101点主義の基本思想と言えよう。
■今日にも受け継がれる101点主義
2015年に日本導入された現行のハイラックス。ここにも、初代から引き継がれた101点主義を垣間見ることができる。
初代から比較すれば、かなり大きくなったボディだが、それは居住性アップの証でもあろう。シートも内装も、他のアーバンスタイルSUVと大きく差が付いているわけではなく、ピックアップトラックとしては豪華な仕様だ。
ダブルキャブの乗員スペースは広さも十分だし、リーフスプリングというものの、乗り心地も悪くない。ハイでラグジュアリーな仕様は、初代から変わっていないのだ。
ピックアップトラックらしくない、ある意味での乗用車感があるのがハイラックスというクルマ。現在も、ピックアップトラックとしては異例の販売台数を積み上げている背景には、長年にわたり受け継がれている101点主義が大きく影響しているのではないだろうか。
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