2024年5月、アメリカで公開されたフェラーリ 12チリンドリ。自然吸気のV12をフロントに積む最新の2シーターだ。車名を英語化するなら「12シリンダー」。つまり12気筒を表わし、文字通り「12個のシリンダー」以外の動力はいっさいなし。エレクトリックパワーに頼らない純血種の魅力とは!?
※本稿は2024年10月のものです
文:渡辺敏史/写真:ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年11月10日号
■環境にも配慮した超高回転型エンジン
エンツォが初めてフェラーリの名を冠したモデルを生み出したのは1947年のこと。125Sのフロントノーズに収められたのは、1.5LのV型12気筒だ。
以来、彼らのラインナップにおいて12気筒のプロダクションモデルが途切れたことはない。エンジン型式そのものがブランドを支える大黒柱ともいえるだろう。
が、その12気筒も昨今の環境的課題において存続の危機にあるのはお察しのとおりだ。さしものフェラーリも、この先の電動化は避けられないと見られていた。
だがそんな状況に彼らがぶつけてきたのは、名前そのものが12気筒という新たなフラッグシップだった。「12チリンドリ」のノーズに収まるのは型式名称F140HDなる自然吸気の65度V型12気筒ユニット。そのルーツは創業者の名前を冠し、2002年に限定モデルとして投入された「エンツォフェラーリ」に遡る。
その後、6Lから6.5Lへの拡大改良を繰り返しながらフェラーリの12気筒モデルの心臓部として採用され続けてきた。
12チリンドリにおいては最新排ガス規制のユーロ6eにも対応するモディファイが重ねられる一方で、830psのピークパワーを9250rpmで絞り出し、レッドゾーンは9500rpm設定と、フェラーリの市販車の歴史においても類のない超高回転ユニットに仕上がった。
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■GTとしてスポーツとして究極を見せる
このパワーを受け止めるシャシーは812スーパーファストより20mm短縮。さらにアクティブリアステアやeデフなどによって低中速域の旋回性をより高める一方で、リアステアは高速安定性方向にも積極的に関与し、巨大なパワーを余さず路面に伝えるよう配慮されている。
加えて、近年のフェラーリのスポーティネスを支える重要な要素が、高度な電子デバイスによるボディコントロールだ。12チリンドリでは6軸ダイナミックセンサーや、電気ブースターを用いた4輪独立ブレーキ制御なども駆使して、挙動を違和感なく丸めている。
その甲斐あって、12チリンドリの運動性能は曲がる停まるの動きが望外に優しい。求めればバキバキの旋回力を発揮する一方で、フラッグシップとして求められるGT的な優雅さもキチンと備わっている。
搭載するエンジンも然りで、低中回転域でのサルーンの如き滑らかなフィーリング、レブリミットに向かうにつれての二次曲線的なパワーの伸び、それに呼応するハイトーンのエキゾーストと、そこには12気筒の魅力が一分の隙なく詰め込まれていた。
価格も究極ながら、内燃機体験としても究極を見せてくれる一台であることは間違いない。
●Ferrari 12 Cilindri 諸元
・全長×全幅×全高:4733×2176×1292mm
・ホイールベース:2700mm
・乾燥重量:1560kg
・前後重量配分:48.4:51.6
・エンジン:V12 DOHC 6496cc
・最高出力:830ps/9250rpm
・最大トルク:69.1kgm/7250rpm
・トランスミッション:8速DCT
・最高速度:340km/h
・0-100km/h加速:2.9秒
・価格:5674万円(クーペ)
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