少子化の中、今大阪府では、府立高校と私立高校で子どもたちの取り合いのような状況になっています。

そんななか、大阪府立高校の入試が今、変わろうとしています。どんなものになるのでしょうか?

■私立高校が人気を集める一方で、府立高校は半数が定員割れに

今月、大阪市内で開かれた私立学校のイベント。

2日間で去年より3000人多いおよそ2万人が来場し、私学への進学を考える生徒や保護者で大盛況となりました。

私立高校を巡っては、大阪府は今年度から授業料について、所得を問わずに保護者の負担を無くす「完全無償化」制度を段階的に開始。私学人気は高まる一方です。

【大阪私立中学校高等学校連合会・草島葉子会長】「驚くほどみなさん、熱心に来られていてうれしいところです。専願で受験なさる方が増えたというのが、一番大きなところでしょうか」

しかし、私立高校が人気を集める一方で、府立高校はことし春の入試でおよそ半数の高校が定員割れする事態に。

■提言では「特色入試」などに加え「日程の前倒し」も提示

府立高校の志願者をいかに確保するかが課題となるなか、16日、専門家からなる審議会は、その入試改革について府への提言内容をまとめました。

提言では、クラブ活動などの経験を加点する「特色入試」を一部導入することや第一志望が不合格でも、第二志望で再び合否判定を受けられる制度の導入などを求めています。

【大阪府学校教育審議会・浅野良一会長】「こういう新しいやり方を提案して、プラス部分を作っていこうと」

さらに提示されたのは、例年3月上旬に実施される一般入試を数週間程度前倒しする案。具体的には2月下旬にすることが検討されています。

■教育現場からは前倒しに疑問の声

大阪府教育庁は、進学先が早く決まることで、不登校などの問題を抱えた生徒について中学校と高校の引継ぎの期間を長くすることができると話します。

【大阪府教育庁・仲谷元伸教育振興室長】「(今は)合格者発表をしてから中学校と情報共有をするのが1日とか2日とかそれぐらいしかない。1~2週間あると必要な生徒にとっては学校訪問して話聞いたり。それぞれの生徒に向き合ってアセスメントをすることで充実した学校生活を送っていただけると考えています」

しかし、中学生の進路指導にあたる教師からは、前倒しによる効果に疑問の声が聞かれました。

【大阪府進路指導連絡協議会 吉村祥弘事務局長】「不登校でいろんな支援にかかわるような子については、進学先が決まってから連携取るということではなくて、受験前までにもいろんな機会で連携を取るようにしているので、進学先が決まったからその時点でスタートということではないかとは思うんですけど」

■「入試前倒し」に受験生や保護者は「楽な時間増える」「卒業まで落ち着く」と歓迎

一方で、「入試の前倒し案」に受験生や保護者たちはー

【中3男子】「早く終わったら勉強忘れられて、楽な時間が増えていいと思います」
【中3の保護者】「早めに決まるというのは安心はするし、早く決まれば決まるほど親子ともに落ち着いて過ごせる日々が、卒業までの日々を落ち着いて過ごせるので悪くはないかなと」
【中2の保護者】「親目線で行くと早まるのはすごく気持ちがストレスが…お兄ちゃんの受験のときもあったので。私立で決まって公立まで精神的に持たないから私立に決めてしまった部分があるので」

■私学団体からは反対の声

こうした歓迎の声が聞かれましたが、この案に強く反発しているのが大阪の私学団体です。

私学側は、数週間程度の「入試の前倒し案」について、「私学と公立の間に対立構造を生むようなやり方だ」と声をあげています。

【大阪私立中学校高等学校連合会 草島葉子会長】「大阪が(入試を数週間)前に持ってくると、私たちも子どもたちのために(私立入試を)前にもっていってあげなきゃいけない。私立の入試を合格不合格によって次どこを受けるか変わってくるので」

また、子どもたちの学びについても、懸念を抱いています。

【大阪私立中学校高等学校連合会 草島葉子会長】「カリキュラムのこと、3月子供たちは何をするのか、枠組みが壊れてしまう。それによって子どもたち学習する量が大幅に減ってしまう。それが問題だと思います」

不安の声が上がるなか、大阪府教育庁は、府立高校入試の改革案について、早ければ再来年の導入を目指すとしています。

■なぜ入試日程を前倒しの背景に高まり続ける私学人気 神崎博デスクが解説

今回の入試改革の背景にあるとみられているのは、府立高校の志願者数の減少です。

私立高校は少子化であるにもかかわらず、微増を続けているという状況です。
そして、今年度から段階的に私立高校授業料完全無償化が始まりました。

そうなると、私立高校の志願者数はさらに増え、府立高校の志願者数が減っていくということも予想されます。

【関西テレビ・神崎博報道デスク】「私立は人気になっていて、府立としては逆転の手を打ちたいというところで、考えられたのが入試の日程です。
これまでは2月10日に入試があり、公立を受けようとしたら、1カ月間受験勉強を続けないといけない。 公立は3月10日前後に試験があるんですね。
私立に決めたら受験勉強を終えて、ゆっくり過ごせるので、私立人気の一翼を担っているようです。
公立側としては、3月の試験を2月下旬にして、私立との試験日の間隔を縮めたら受験勉強を2週間ぐらいなら頑張れるかということで、受験日程を繰り上げる案を考えているみたいです」

■ジャーナリスト・浜田敬子さん「府立高なくなれば教育民営化。それでいいのか」

府立高校は半数が定員割れしているという状況です。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「完全無償化によって、経済的な理由で私立高校に行くことを諦めることがなくなるっていうのは、選択肢が広がるのでいいことですけども、府立は定員割れになれば、廃校とか休校が増えますよね。
地域的に高校の偏りが出てくると思うんですよ。都市部に偏ってしまう。通学費は補助が出ないですよね。 私立に行こうと思ったら、自分で負担しなきゃいけない。
もう一つ気になるのは、高校は義務教育じゃないですけど、高校は行政が責任を持った公教育ですよね。府立高校がなくなると、教育を全部民営化するという形になるので、それでいいのかな?と思います」

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