特集は山あいにある空き家の活用です。増加の一途をたどる空き家。長野市内だけでも1万2390戸に上っています。利活用が課題となる中、長野市信州新町の信級地区では、大学生が空き家を改修し、交流の場にしようとしていて、若者と山あいの集落の間に新たなつながりも生まれています。


■静かな集落ににぎやかな一角

長野市信州新町の信級地区。55世帯・100人余りが暮らしています。

静かな集落の中に、にぎやかな一角がー。


行われていたのは空き家の改修。

建築などを学ぶ信州大学工学部の学生たちが住民と連携しながら、「ある空間」にしようと取り組んでいます。


信大工学部 信級すみずみLab・阿部有希さん:
「信級の方だったりとか、ここに来られた方の交流の拠点となるような場所になったら、移住促進とかに大事なのかなと。そこをまず目的として改修」

「空き家」が縁で山あいの集落に若者が集まり、そして新たな交流も生まれています。


■集落の半分が空き家

過疎と高齢化が進む信級。集落には80戸ほどの家がありますが、半分の40戸ほどは空き家か、普段、無人の状態となっています。

改修中のこちらも5年ほど前から空き家になっていました。現在の所有者は近くに住む浅野知延さん(42)。

10年ほど前に地域おこし協力隊員として宮城県から信級に移住。

現在は炭の器の盆栽「炭盆」の制作を手掛けています。

空き家を購入したのは3年前。自宅ともつながっている簡易水道を維持するためと、いずれ「田舎暮らしが体験できる宿泊施設に」と考えたからでした。


■空き家の活用が次の活用を生む

その改修を学生たちが手掛けることになったのはー。

空き家の所有者・浅野知延さん:
「『食堂かたつむり』によく(信大の)佐倉先生が来ていたので、そこで知り合った。面白い宿をつくりたいなというのを佐倉先生と話したときに『面白そうだね』と」


きっかけは浅野さんが学生たちを指導する佐倉弘祐教授と知り合ったこと。


出会った場所は「食堂かたつむり」。地区出身の女性が交流の場にしようと、やはり「空き家」を改修し、2017年に開いた店です。

空き家の活用が次の活用を生んだとも言えます。


■週末になると学生たちが

地区内外の人が集まる「信級らしい交流施設にしよう」。

学生たちと浅野さんの思いが一致し2023年、プロジェクトがスタート。学生たちは週末、空き家で寝起きしたり、地区の行事に参加したりと住民と交流しながら作業を進めてきました。

信大工学部 信級すみずみLab・阿部有希さん
「学生がここでやっているということを知ってもらって、僕たちも刺激を受けている。窓からのぞいてくれたり、車の窓を開けて話しかけてくれて本当にうれしい」


■改修を通じ建築の基本を学ぶ

7月、1階の和室を解体。

コンクリート敷きの土間に造り替えました。


この日は柱や建具の作業。

改修を通じて、学生たちは建物の構造や建築の基本を学んでいます。

大学生:
「うまいこと工夫して今はめられた。おおむね水平もとれ、柱の機能を果たせる程度に完成」


■大学生と集落の“つながり” 

一方、こちらは土壁を塗るための土作り。

実際に土壁を塗る前に学生たちに練習してもらおうと「食堂かたつむり」が土壁の修復を依頼しました。

「食堂かたつむり」・寺島純子さん:
「下の方あんまりこねられてないよ。発酵しているにおいするでしょ、これがいいの」

アドバイスするのは6年前、空き家を改修し食堂を立ち上げた寺島純子さん(65)。

自身と同じように信級のために行動する学生たちを頼もしく感じています。

「食堂かたつむり」・寺島純子さん:
「面白がって来てくれる、ここで楽しそうにやってくれている。それだけ村の人たち、みんなすごく喜んで、みんな楽しみにしている。何でもないことを一緒にやって、つながっていくことが地域づくりだと。それこそが地域の活性化のもと」


翌日、いよいよ空き家の土壁を塗りました。

練習の成果はー

大学生:
「(練習の成果は?)はい、出てます。(きのうは)最初の層を塗るときに力が弱くて落ちてくることがあった。今回は力を込めて意識している」


住民(70代):
「適当なところでのばさないと乾いてきてしまって、のびないからね」

住民が訪ねてきてアドバイスー。

住民(70代):
「(学生たちの取り組みは)素晴らしいです。子どもの声が聞けなくなったことが一時期あった。学生たちが来てくれることは層が(できる)、いろいろな年齢層ができることはすてき。文化の継承はそういうのがないとできない」


■作業のあとは住民と交流

学生:
「本日も午前中、午後と作業お疲れさまです」
「乾杯!」

作業のあとは住民とBBQで交流。

名物のジンギスカンも―。


4年生:
「長野にいても食べないから、貴重な機会。漬け込んであって柔らかくておいしかった」


「食堂かたつむり」寺島純子さん:
「楽しかった。近所の人も来てくれて、これがいいな、みんな家族。まだ歌い足りない、こっから、こっから」


4年生:
「疲れ吹き飛ぶくらい楽しい。ここに住んできて、家と対話しながら生きてきた人は知識がある。信級の人は家の造り方をわかっていて、そういう話を聞けて貴重」


■空き家が縁で生まれた結びつき

「空き家」が縁で生まれた若者たちと集落の結びつき。

交流施設の完成は来年度の予定で、学生たちは、多くの人に自分たちと同じような体験を新施設でしてもらいたいと考えています。


信大工学部 信級すみずみLab・阿部有希さん:
「いろいろな方が手伝ってくれたりとか、住みながらやっているので、生活面で支えてくれることもあり、そういう(交流の)拠点として使ってほしい。信級がこのままであったら、変わらずこのまま続いてくれることが一番」

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