8月に愛媛・松山市で俳句甲子園が開催され、全国各地で行われた地方予選を勝ち上がった32チームが大街道に集結した。愛媛県からは全国で最多となる5校5チームが参加。その中で4年ぶり8回目の出場となったのが愛媛県立松山西中等教育学校だ。

地方予選を勝ち抜き、4年ぶりに全国大会への切符をつかんだ松山西中等教育学校の5人の高校2年生。個性豊かな彼らが、十七音に青春をかけた夏の挑戦を追った。

個性バラバラ 仲良し5人衆

2024年の松山西中は、2023年の地方大会を経験している部長の白石萌花さんと山本晃大さんに加え、金子佳資さん、戸田悠惺さん、木口真乃加さんの高校2年生5人で大会に臨む。

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俳句が好きな同級生5人、さぞかし気が合うのかと思いきや…。「個性がバラバラ、意見もバラバラ、それ(チームワーク)どこがいいん」とぼやく5人の声が聞こえてくる。

しかし、これが松山西の特徴でもあるという。部活の指導員・熊本良悟さんは「仲良しこよしチームって僕は言ってるんですけど、上下の関係がないでしょ。先輩がいないでしょ。だから好き勝手言って泣いたり、笑ったりしながらやってるようですね」と話す。

個性の異なる5人だからこそ、活発な意見交換ができるのかもしれない。

大会まであと2日、この日は俳句甲子園前の最後の練習が行われた。
全員が初めて挑む全国大会。去年は先輩と挑戦するも、あと一歩のところで手が届かなかった目標の舞台だ。

山本晃大さんは「(去年は)地方大会で決勝行けたんですけど、負けてしまって。その時の悔しさっていうのは、全国大会に行っても忘れないようにしたいです」と語った。

思いを句に込めて…白熱の予選リーグ

迎えた俳句甲子園の本番。初日の予選リーグでは、8つのブロックに分かれて4校が総当たりで対戦する。

この予選リーグを勝ち上がって予選トーナメントに進めるのは、各ブロック1校のみだ。部員たちは時折、笑みを浮かべてはいるものの、どこか表情は硬く、みんなの緊張が伝わってくるようだ。

予選リーグの初戦、松山西は、山口県の下松工業高校と対戦した。

木口真乃加さんが詠んだ「首飾り 除けてハンカチ 押さえけり」

先鋒戦、兼題は「ハンカチ」。松山西の木口さんは「首飾り 除けてハンカチ 押さえけり」と詠み上げた。
続いて対戦校、下松工業高校が「ハンカチの 角きつちりと 面接日」と詠み上る。

俳句甲子園は、お互いの句を批評しあうことで勝敗が決まるルールだ。松山西の句に対しても鋭い指摘が入る。

下松工業高校の生徒は「首飾りをもっと具体的に言ったら、景(情景)がより詳しく浮かんでもっと良い句になるのではないかと思ったのですが、どう思われますか?」と質問した。

これに木口さんは「この句におきましては、首飾りということによって自分がより大事にしているという意味を持たせることができて、首飾りのおかげでこの句の深みがもっと出ると思うんです」と答える。限られた時間の中で、自分たちの句に込めた思いを精いっぱい伝えていく。

限られた時間の中で、自分たちが句に込めた思いを伝えていく。また、後攻の松山西も対戦校の句に対して質問を投げかける。

白石萌花さんは「“きっちりと”を文語じゃなくて口語で書いたほうが、よりリアリティがあると思いますし、景が伝わってくるんじゃないかなと思うんですけど、そこはどうでしょうか?」と問いかけた。

松山西の初戦、判定の結果は赤旗が4本、白旗が1本上がり、まずは松山西が1勝。安堵(あんど)の表情が浮かんだ。

続く下松工業高校との中堅戦。ここで勝利すれば白星発進となる重要な局面ということもあり、5人のディベートにも熱が入る。
そして結果は赤旗が4本、白旗が1本上がり、先鋒戦、中堅戦を勝ち抜いた松山西が貴重な初戦を勝利で飾った。

涙の敗者復活戦

松山西の2戦目の相手は、沖縄県の興南高校Bチーム。3年連続で俳句甲子園の全国大会に出場している経験豊富な高校だ。

互いに一歩も譲らず、1勝1敗で迎えた大将戦。
白熱のディベートの結果、赤旗が5本上がり興南高校Bチームが勝利。あと一つ勝利には届かなかった。

金子佳資さんは「2試合目で、だいぶ自分の中でしゃべりがごたついてしまって、点を取られたっていう焦りとか色々感情が混ざって、あまり自分の力を出せた感じがしなくて、自分の中ではうまくいかない結果でした」と振り返った。

予選リーグで一度でも負けてしまうと、次のトーナメントに進むことが難しい。
金子さんは「1回取られてしまったんで(予選トーナメント進出は)なかなか難しいんですけど、その中でもとりあえず全力を出して頑張っていけたらなと思います」と話した。

そして午後から行われた3試合目。松山西は、句の創作力や相手の句を的確に鑑賞する力などが評価され、見事勝利した。予選リーグの全ての試合が終わり、先ほどまで鋭いディベートを繰り広げていたメンバーもリラックスした表情を見せた。
翌日の敗者復活戦に望みをつなげる。

白石萌花さんは「所々言えなくて悔しい部分とか、相手側の時間の使い方がうまくて、私たちが答えられないように終わったりするところがあって、結構悔しい部分もあるし、2回戦負けたのが相当悔しかったんですけど、おそらく敗者復活戦に出られるかなと思うので、敗者復活戦の句をきょうの夜にしっかり準備して、あしたに臨みたい」と意気込みを語った。

決勝戦に進むための最後のチャンスとなる敗者復活戦。その結果は拍手の中、愛媛県勢では今治西高校伯方分校が選ばれたが、松山西の俳句は選ばれなかった。
「敗者復活いけると思いました~」と白石萌花さん。山本晃大くんも「なんでいけないんですか?」とこぼし、ロビーで5人は悔しがった。

指導員の熊本良悟さんは「『なんで』は俺に言っても。そら俺やったら通すけども、優しくないんだよ、全国は」と慰める。

同級生5人で挑んだ大舞台への挑戦はここで終わった。

金子佳資くんは「今までこういう部活とかにここまで熱心になったことがなくて、それだけにこんな形で敗退してしまったんだっていうのが、いざ決まったときにすごく悔しくて。ただただ悔しいです」と涙を浮かべた。

木口真乃加さんも「試合に負けてたから泣いてたというか、もうこの5人でディベートできないのかなとか思うとすごく涙が出て、それがつらいです」と悔しさをにじませた。

再挑戦へ熱い思い「絶対出ます!」

来年は高校3年生になる5人。受験勉強などがあるため、来年も出られるかは分からないと話す。

白石萌花さんは「悔しいから出たいとは思う。もう一回出たいとは思う」と話し、戸田悠惺くんも「なんか抜け駆けするようやけど、俺は絶対出ます」と、再挑戦への熱い思いを口にした。

第27回俳句甲子園は、愛知県の名古屋高校Aチームと沖縄県の興南高校Aチームが決勝で対決し、接戦の末、名古屋高校が優勝し幕を閉じた。

同級生5人で挑み、あと一歩届かなかった憧れの舞台。
五・七・五の十七音にありったけの青春を込めて。愛媛の、全国の高校生たちの俳句への挑戦はこれからも続く。

(テレビ愛媛)

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