目の前の差別に「違うと思う」と手を上げられますか。「遠くのできごとに人はうつくしく怒る」という詩の一節を聞いてドキッとしてしまいました。差別のない社会のために、大人が子供たちにできることはなんでしょうか。

テレビ静岡で9月8日に放送されたテレビ寺子屋では、作家で子供の本の専門店「クレヨンハウス」を主宰する落合恵子さんが、本の一節や詩を紹介しながら差別問題を取り上げました。

◆肌の色は選んでいません

作家・落合恵子さん:
私たちはみんな、人種や肌の色が何であろうとそれぞれ違いを持っていて、その違いを大事にし合う、違いが差別の理由にならない社会を作っていくことが最も大切なことだと思っています。平和のためにも基本的人権を守っていくためにも、ぜひ一緒に考えてください。

アメリカのルビー・ブリッジズさんが書いた「ルビーの一歩」という本があります。ルビーはその町の白人だけが通う小学校に6歳で入学した時に、「学校に来るな」とさまざまな迫害を受けます。

他の子と違うのはたった一つ、肌の色。けれど肌の色は、彼女は選んでいないのです。

本にはこう書かれています。

「白人だけの学校に通いはじめた最初の日、白人の親たちが駆けつけて、自分の子供をつれかえってしまいました。自分の子供を、わたしといっしょに通わせたくなかったから。でも、どうして? わたしにはわかりませんでした。その人たちは、それまでに一度もわたしと会ったことはありません。なのに、わたしがどんな人間なのかを、どのように知ったというのでしょう? でも、どんな人間なのかはどうでもよかったのです。その人たちは、わたしをひとりの子供としてさえ見ていなかったのだと思います。見ていたのは、ただわたしの肌の色だけ。わたしは黒人です。ただそれだけで、わたしをなんの価値もない人間と判断していたのです。」

多くの差別は、こんなふうに理不尽なものです。どの国で起きたとしても理不尽です。

きっちりとした説明などできないのです。これはもう60年近く前の出来事ですが、残念ながら変わっていません。

◆目の前の差別に向き合う勇気を

私が尊敬する大好きな詩人、石川逸子さんの「風」という詩があって、その中に次のような言葉があります。

「遠くのできごとに人はうつくしく怒る」

私たちの国もありませんか? 遠くの出来事には美しく怒ってみせる私たちが、目の前にある差別には距離を取ってしまう、目をそらしてしまう、知らなかったふりをする。今、目の前にある差別にも「違うと思います」と手を上げることが可能でしょうか? 可能でなければいけないのです。

手を挙げた人、一人が目立ってしまう社会は悲しすぎますね。

誰かが手を挙げたとき、「私もそう思います」ぐらいは言えるはずです。それが私たち大人が、次の世代の子供たちに贈ることができる大事なテーマだと思っています。

◆頼りになる大人を目指して

20世紀は戦争の世紀と呼ばれました。21世紀になり24年目を迎えています。

「どこに進むのですか? 何を見て進み、何を理想とするのですか?」と、もう一度問いかけていくことができたらいいなと心から思います。

すべてはどこかの話ではなく、引き寄せて自分の話であると見つめていきたいです。

あなたのお子さんお孫さんが、あるいは血のつながりはなくても、あなたをとても大事に思っている子供たちが、何かあったとき「あの人のところへ行って相談しよう」と思ってくれたら、こんなに嬉しく誇りに思うべきことはないですね。

私たちはそんな大人の一人でありたいなと心から思っています。

落合恵子:1945年栃木県生まれ。執筆活動と並行して、子供の本の専門店クレヨンハウスなどを展開。総合育児・保育雑誌「月間クーヨン」や、オーガニックマガジン「いいね」の発行人。

※この記事は9月8日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。

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