空家等対策特別措置法に基づく、福島県内初の行政代執行が行われた。今にも崩れそうな福島県只見町の一軒家。長らく人が住んでおらず、周囲に危険が及ぶ可能性もあることから、町が「特定空き家」に指定していた。10月17日に只見町は所有者に代わって建物の解体に着手した。
築・約65年 20年間空き家に
福島県只見町蒲生にある、木造2階建ての空き家。屋根は大きく曲がり、壁は元の形がわからないほどに崩れていた。
この記事の画像(10枚)只見町によると、築年数は約65年で20年ほど前からは空き家になっていたと見られている。
近隣住民は「倒壊して、ケガ人が出たらもっと大変ですよね」と心配する。
所有者に対応求めるも…
只見町は、建物の損傷が激しく近くの住民にも危害が及ぶ恐れがあるとして、4年前から「空家等対策特別措置法」に基づく「特定空き家」に指定。所有者に解体を求めてきたが、期限までに回答はなかった。
そして2024年10月17日午前10時、福島県内で初となる特定空き家への行政代執行が宣言され、只見町が解体を開始。
17日は、本格的な取り壊しに向け、生い茂った草を刈るなどの準備作業が行われた。
住民からは安堵の声
只見町役場・交流推進課の目黒康弘課長は「最終的には安心安全を優先する形で、それに関しては何事にも変えられないもの。そういった中で、非常に重い決断をさせていただいた」と話す。
この空き家の解体にかかる費用は、約300万円。只見町が立て替えたのち、所有者に請求することになる。
雪で倒壊の危険が高まる冬を前にしての着手に、近くに住む住民からは「年々潰れてくるので、困ったなと思っていました」「風や雪の影響も。だから町で撤去してくれることになって、非常にありがたい」との安堵の声が聞かれた。
建物の解体は、2025年2月までかかる見通しだ。
特定空き家とは?
「特定空き家」は法律で定義されていて、そのまま放置すれば倒壊などのおそれがある場合、悪臭など著しく衛生上有害となるおそれがある場合、著しく景観を損なっている場合、周辺の生活環境保全のため不適切な場合など、これらに該当すると市町村が判断すれば「特定空き家」に指定される。
行政は、指定したあと何段階にも渡って持ち主に改善を促すが、それでも対応がない場合、持ち主に代わって解体する「行政代執行」が実施される。
“なんとなく空き家”が増加
こうした空き家をめぐる問題はどうすれば解決に向かうのか。不動産学が専門で、空き家問題に詳しい横浜市立大学の齊藤広子教授「空き家が増えている背景は、やはり人口減少・世帯減少に大きな理由がある」と指摘する。
齋藤教授は、なかなか処分されない空き家を”なんとなく空き家”と呼んでいるという。突然の相続で「空き家」をどうするのか、相続人が意思決定できないまま放置された”なんとなく空き家”が全国的にも多いと指摘する。
活用の模索が重要
齊藤教授は「空き家になる前に、お使いになられている方などのご両親にどういう風に使ってほしいかという意向の確認をしておくということも対策としてあると思う。空き家になってから親族とか関係者で意見を調整するのは難しい」と話した。
また、「特定空き家」となる前に対処することも大切で、自治体の空き家バンクへ登録したり、DIY可能な物件として貸し出したりなど空き家の活用方法を模索するのも重要だとしている。
福島県によると、県内には現在270軒の「特定空き家」が存在している。
齊藤教授は自治体にも多角的な考え方が求められるとし「地域の移住者を増やす、福祉に使うなど、色々な部署や関係者の連携が大事」と話す。対策が不可欠ともいえる空き家問題。様々な角度からアプローチしていく必要がありそうだ。
(福島テレビ)
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