2児の母となったミランチュクは産前産後の女性を支援する事業を立ち上げた NATALLIA MIRANCHUK

<妊娠が分かってから離婚を決めて不安に苦しんだ日々、そんな時期の女友達の助けが起業のヒントに>

私は16歳の時、医者から自然に妊娠する可能性はとても低いと言われた。まだ10代だったし、将来はモデルになりたかったから、特に気にしなかった。子供を産むのはずっと先のこと。その時になったら奇跡が起きるかも、と。

夢がかなってモデルになり、モデルエージェンシーの経営も手がけた。その後、写真家と結婚し、彼と共に新生児の写真を撮るビジネスを始めた。2年ほどして「奇跡」が起きた。妊娠したのだ。ホルモン療法も人工授精もなしで。

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でも、「めでたし、めでたし」とはいかなかった。妊娠が分かると夫は目に見えて落ち着きを失い不機嫌になった。父親の務めを果たす自信がなかったのだろう。イライラして物に当たるようになった。

こんな調子では、とてもやっていけないと思った。父は亡くなっていたし、母はまだ小さな弟の世話に追われていて、離婚しても誰にも頼れない状況だったけれど、私の気持ちは変わらなかった。

強い不安に駆られたのは臨月の頃。とても心細かった。シャワーを浴びるだけで頭がクラクラする。1人で倒れて、誰にも発見されなかったら? 不安でいっぱいの私を救ったのは女友達だった。

新米ママたちに寄り添う

出産子育てを経験した友人たちが手を差し伸べてくれた。彼女たちはアドバイスをくれ、食事の準備を手伝ってくれて、そばに寄り添ってくれた。何よりありがたかったのは、つらいときは助けを求めていいと教えてくれたことだ。

彼女たちに支えられて落ち着きを取り戻した私は、少しずつ気付いた。私の中には既に母性が育っている。幼子を優しく包む「ビッグ・ママ」がいる。不安なときは自分の心の声に耳を傾ければいいと悟った。


友人たちに助けられ、自宅で自然分娩で出産。そして3カ月後、仕事に復帰した。わが子のためにも働かなければならない。

新生児の写真撮影の仕事を再開したことで、今度は私が新米ママたちに寄り添う立場になった。撮影の合間、彼女たちは出産のことや今の悩みを私に話した。授乳や不眠の悩み、家族関係のトラブルなど。専門家の支援が必要な場合は医師やカウンセラーにつなげた。

WHO(世界保健機関)によると、女性の5人に1人が妊娠中か出産後1年以内にメンタルヘルスの問題を抱えるという。自殺願望を抱いたり、自傷行為に走る女性も20%ほどいる。

出産前にシングルマザーになり、不安でいっぱいだった日々。あれから何年もたった今、私は2児の母であり、スタートアップ企業スーラの創業者でもある。

産前産後の女性に寄り添い、家事や精神面の支援をする専門職は「ドゥーラ」と呼ばれるが、スーラはそのバーチャル版のようなもの。

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産前産後は身体的にもメンタル面でも支援が必要な時期だ。世界中の女性たちが自信を持ち、喜びにあふれ、充実した気持ちでこの時期を過ごせるよう、スーラは年中無休で時間や国・地域を問わず妊婦や新米ママたちの相談に乗っている。

私が伝えたかったのは、出産のことだけではない。本当に目指すものを見つけることの大切さだ。自分が歩いてきた道を振り返ると、私は感謝の気持ちでいっぱいになる。1人になったときは怖かったけれど、あの別れがあったからこそ今の私がある。

ナタリア・ミランチュク(スーラ共同創業者)

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