自覚症状がないまま視野がだんだん狭くなる目の病気「緑内障」。眼圧が高いことが原因とされているが、実は日本人の場合は、正常な眼圧でも発症する人が多いというデータがある。これまで目薬を使う治療の主流だったが、レーザーを使って症状を和らげる治療も登場し、注目されている。

この記事の画像(10枚)

視神経が痛んで視野が狭くなる 

今回、福井県済生会病院の眼科部長・新田耕治医師に緑内障について話を聞いた。新田医師によれば、視神経が痛んできて視野が狭くなる病気が緑内障だという。

緑内障のメカニズム①

「発症のメカニズムは、黒目のすぐ後ろに瞳があり、瞳の奥には毛様体といって目の水が湧いてくるところがあるが、湧きっぱなしだと水がパンパンになるので瞳の付け根に配水管がある。この配水管がだんだん目詰まりしてきて流れが悪くなると水がたまり、それが神経をギュッギュっと圧迫して神経が痛んでくる」(新田医師) 

緑内障のメカニズム②

ある研究では、40歳以上の20人に1人が発症するとされているが「緑内障の初期は自覚症状がない。だからたまたま見つかることが多い。

 緑内障の視野イメージ 

発症すると、白く霧がかかったような視界になり、多くの場合、ゆっくりと時間をかけて進行していくという緑内障。「初期、中期、後期と、だんだん神経が痛んでくると見にくいところが増えてきて、最後には全部見えなくなる」という。

近視の人は眼圧が正常でも発症の恐れ

 眼圧が正常でも緑内障を発症 緑内障になりやすい人の特徴について新田医師は「体質的に眼圧が高い人といわれている。眼圧が高いと病気が進みやすいのだが、日本人のデータでは眼圧が高くない正常眼圧の緑内障の人が圧倒的に多い」と指摘する。

なぜ日本人は、正常な眼圧の人にも緑内障が多く見られるのか。それは日本人に多い「近視」が関係しているという。

近視の人は眼球の奥行きが伸びる

 福井県済生会病院 眼科部長・新田耕治医師:
通常の眼球は球の形をしているが、近視の人は奥行きが伸び、その分、眼鏡やコンタクトレンズで焦点距離をより後ろの方にしてピントを合わせる。視神経は少し斜めにあるので後ろが伸びると視神経がねじれて位置が変わってしまう。視神経には周りからたくさん栄養が与えられているのに少し位置が変わったりねじれたりすると、その分距離が出て血流が悪くなり、視神経が弱くなる」 近視の人のほかにも、高齢者や遺伝的に家族の中に緑内障の人が多い人などは、緑内障の可能性が高まるといわれている。

レーザー治療で症状を緩和 

従来は目薬を使う治療法が一般的だったが、目が充血する、アレルギーでかぶれるといった副作用がある。新田医師は患者の負担軽減につなげようと、SLTと呼ばれる緑内障のレーザー治療法を、正常眼圧の緑内障患者に施した効果について研究発表をした。

緑内障のレーザー治療「SLT」 

福井県済生会病院 眼科部長・新田耕治医師:
緑内障は目の配水管の網目の構造をしているところが目詰まりをしてきているので、レーザー治療ではそこに直接電気を当てる。クーラーのフィルターを掃除するようなイメージ。そうすると汚れが取れて流れが良くなる。

日帰りでの治療が可能で、運転などへの制限もない。「3日間くらいは目の充血や違和感があり、かすんだりする人もいるが、1週間くらいするとそれらの症状もほとんど取れる。1回のレーザー治療で目薬1個分の効果があり、平均的には効果が2年程度がある」(新田医師)

 しかし現在のところ、目薬やレーザー治療で病気の進行を遅らせることはできても、治すことはでいない。新田医師は早期発見のために検査を受けることが重要だとする。

40歳を過ぎたら定期的に検査を

新田医師は「40歳を過ぎたら3年から5年に1回、眼科を受診する。写真を撮ると緑内障が疑わしいかどうかが正確に分かる機械が出ているので、調べて大丈夫だったらまた5年後に受診するなどしてほしい」と呼び掛ける。

 従来の目薬治療では“さし忘れ”の心配などもあり、レーザー治療をする人が全国的に増加傾向にあるという。緑内障は初期の段階で発見して進行を遅らせることが重要だが、初期では自覚症状がないことがほとんどなので、40歳を過ぎたら定期的に検査を受けることが重要だ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。