子育ての中でも苦労することの多い思春期。スマホの普及など時代の移り変わりが、思春期の子育てをより困難にしています。尾木ママこと尾木直樹さんは、言いたいことをはっきり伝え、話を聞いて共感することが重要だと語りました。
テレビ静岡で12月15日に放送されたテレビ寺子屋では、教育評論家の尾木直樹さんが、思春期の子育てを乗り越えるためのポイントを教えてくれました。
◆頭の回転が100倍速くなる思春期
教育評論家・尾木直樹さん:
「思春期」を引き起こすのは、基本的に体の成長や変化です。時々、「思春期がなかった」「反抗期がなかった」などと言う人がいますが、50年余り教育に携わっている僕が見ていても、強弱や長短の違いというのは感じますが、思春期のない子というのは見たことがないです。
もちろん日本の子供だけでなく、例えばドイツ語でも思春期にあたる言葉があり、日本語で直訳すると「疾風怒濤の時代」です。
アメリカの最近の脳科学では、12歳からの脳を「ティーンズ脳」と呼び、11歳から12歳になりティーンズ脳になる時に「脳の回転スピードが変わる」という研究があります。口ごたえをしたり、言い負かされそうになったりする。あれは頭の回転が良くなっているためで、どれぐらいの変化なのかと言うと、なんと100倍も速くなるのだそうです。だから、ああ言えばこう言う。もう大変ですね。
◆新時代の子育てを乗り越えるコツ
今、スマホ時代になりいいこともたくさんありますが子育ては困難で、自分の経験やキャリア、あるいは年齢で子供をリードすることができなくなってきています。太古の昔から年配者の言うことはよく聞いたもので、人類始まって以来のことだと思います。
思春期になり脳が100倍速く回転し、なんでもかんでも対応されてしまうようになり、そこにスマホまで加わったこの時代の子育て。乗り越えるポイントが2つあります。
◆言いたいことははっきり伝える
ひとつは、「言いたいことはスパッと言う」。例えば、通学用に真っ赤なカバンを買ってきて、どう考えても校則違反だという時、けんかになってしまうかもしれませんが、「色合いは地味なものにしようと決めたでしょ。これが地味なの?」などと言いたいことはスパッと言うことがすごく重要です。
思春期は反抗期とも言われて「なんでだよ、友達もみんな持ってるよ」などと子供は反抗してきますけれど、そこに巻き込まれ、押されているだけでは絶対にダメ。
壁にもならなきゃいけないんです。「お母さんはそれ嫌いだから返しておいで」と言ったら、あとは深追いをしないでパッと引く。引き際がポイントです。
◆「どうしたの?」から始めて共感する
もうひとつのコツは、「なんか悩んでるかな、イライラしてるしどうしたのかな」というとき、ありますよね。
そういうときは「どうしたの?」。このたった5文字、これを発してみる。
すると理由を聞いてくれたわけですから、答えやすくなります。答えたことに対してどうするのかというと、ここが大事です。
「そりゃ大変だったね」と共感するのです。するとなんか心が楽になって、元気が出てきます。
共感されることによって、「あるべき方向」に自分から進もうとしてくれます。そうしたら、「すごいね、あなたは」と褒めたらいいんです。
「どうしたの?」と簡単なようでなかなか言えないんですよ、頭にきちゃうから。ぜひ練習して使ってみてください。この2つのポイントを生かし、思春期の子供の子育てを楽しく乗り切っていきましょう。
尾木直樹:1947年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、教師として22年間子供主役の教育を実践。その後大学教員に転身し22年教壇に。現在は法政大学名誉教授、臨床教育研究所「虹」所長。
※この記事は12月15日にテレビ静岡で放送された「テレビ寺子屋」をもとにしています。
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