「毎回締め切りに少しだけ遅れる」「些細なことなのに自分の主張を曲げない」
こうした部下に対する上司の小さな困りごとが積み重なる。
そんな部下は場合によっては「グレーゾーン」の可能性があり、さらには対応に追われる上司がうつ状態になってしまうこともあるという。
約1万人をカウンセリングしてきたストレスマネジメント専門家の舟木彩乃さんは、こうした部下を持つ上司は診断名にこだわらず、サポートをしていくことが大事だとする。
著書『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)から、なぜ部下が発達障害・グレーゾーンだと思ったのか。上司が感じた事例を通して考えうるサポート方法を一部抜粋・再編集して紹介する。
まずは事例性で検討を
発達障害に関して、カウンセラーである筆者のところに相談にくる人は、本人が「自分は発達障害かもしれない」と思っているパターンのほか、「部下が発達障害かもしれない」と部下の発達障害を疑う上司も少なくありません。
後者の場合、上司は、部下の仕事ぶりや言動に悩まされていることが多く、すでに両者の人間関係に問題を抱えている場合がほとんどです。
この記事の画像(5枚)筆者は、上司のメンタルケアなども視野に入れながら、どのような言動から部下の発達障害を疑うに至ったのか、そのエピソードを丁寧に聞くようにしています。
それと同時に、部下を発達障害と決めつけているような上司に対しては、疾病性(診断名)にこだわるのではなく、事例性(仕事に出ている影響)で検討していくよう促すことを心がけています。
安易に診断名と結びつけない
そのうえで、「どのようなことで具体的に困っているのか」「上司や同僚でフォローできそうなことはあるか」について話し合うようにしています。
当然ですが、上司の話だけで部下が発達障害か否かをジャッジすることは不可能で、そもそもASD(自閉症スペクトラム障害:Autism Spectrum Disorder)とADHD(注意欠如・多動性障害:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)の診断基準ではカテゴリーが重なり合っていたりすることもあるため、医学的な分類が無意味というケースもあります。
ただ、発達障害についてネットなどで調べ、少し知識がある上司は、部下の特異な言動を取り上げて「こんなことがあったのでADHDだと思う」とか「記憶力だけは抜群なのでASDだと思う」など、安易に診断名と結びつけるような発言も少なくありません。
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