土砂降りの中、櫛田神社の清道を駆け抜ける一番山笠・大黒流=福岡市博多区で2024年7月15日午前5時、吉田航太撮影

 クライマックスとなる「追い山笠(やま)」を15日早朝に迎え、幕を閉じた博多祇園山笠--。博多の街には観客の歓声と、舁(か)き山笠を担いで駆け抜ける男たちの「オイサッ、オイサッ」という掛け声が共鳴し、打ちつける雨に負けない熱気に包まれた。

 15日午前3時ごろ、櫛田神社(福岡市博多区)近くの沿道には各流(ながれ)の舁き山笠が並び、すでに多くの見物客が人だかりを作っていた。雨が降り続けるなか、レインコート姿の観覧客で桟敷席も満席状態に。

 15日間に及んだ祭りは午前4時59分、最高潮に達した。神社に大太鼓の音が鳴り響き、七流の中で最初に駆け出す2024年の一番山笠・大黒流が「ヤーッ」と声を上げて境内に突入。緊張感と静寂を破るように「オイサッ、オイサッ」と響く掛け声に合わせて拍手と歓声が沸き起こった。

 大黒流は清道旗(せいどうばた)と呼ばれる旗の周りを旋回する「櫛田入り」を果たし、「博多祝い唄(祝いめでた)」を唱和後、神社を飛び出して約5キロ先の「廻(まわ)り止め」(同区)を目指し、その後も5分間隔で六つの流が続いた。「走る飾り山笠」で知られる八番山笠・上川端通の飾り山笠(高さ約15メートル)が登場すると、桟敷席は「おー」とどよめいた。

 福岡市早良区のパート、二宮久実代さん(53)は「桟敷席から見たのは初めて。目の前で見ると勢いと迫力があってなかなかできない体験ができた」と笑顔で話した。米国出身で九州大大学院修士1年のジャバー・ゼイドさん(29)は「男たちの強い意思を感じて、気持ちが燃え上がった。歴史ある伝統が今も続いているのは素晴らしいことで、自分も入ってみたいと思った」と感動していた。大黒流の舁き手の松岡弘樹さん(40)は「この1年を振り返りつつ、流の伝統をかみ締めながら奉納した。かっこいい姿を見せることができたと思う」とすがすがしい表情で語った。【栗栖由喜】

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