大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で、無罪が確定した不動産会社の山岸忍元社長(61)が国家賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、特捜部が山岸氏の元部下を取り調べた際の録音・録画データの証拠提出について、範囲を大幅に制限した大阪高裁決定を破棄し、大阪地裁が命じた約17時間46分の提出を認める決定をした。

決定は16日付で、会社はプレサンスコーポレーション(大阪市)。裁判官4人全員一致の意見で、取り調べの録音・録画データの提出を最高裁が認めたのは初めて。近年、検察の取り調べが問題になるケースが多く、今後の捜査に影響する可能性がある。最高裁決定を受け、山岸氏は「正しい判断をしていただき、うれしい」とのコメントを出した。

第2小法廷は「審理を担当する地裁が、データは立証に最も適切だと判断したことには合理性が認められ、相応の配慮が求められる」と指摘。元部下が証拠採用に反対しておらず、プライバシーが侵害される恐れがないなどとして、提出による弊害はないと判断した。

地裁は昨年9月、検事が机をたたき「ふざけんな」などと責める様子があったとされる5日間の計約17時間46分に及ぶデータの提出を命じ、国側が即時抗告。今年1月に高裁は「データを反訳した書面で検事の言動を推認できる」として、確定した刑事裁判で証拠として提出された約48分に短縮し、山岸氏側が不服を申し立てていた。〔共同〕

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