政治家は、傷ついた被災地に希望をともしてくれるのか。元日の地震と9月の記録的豪雨に見舞われた石川県能登半島で、有権者はこれまで以上に投票の重みを感じている。「こんな時だからこそ、何とかして」。一日も早い復興への願いが1票に託され、国政に届けられる。
輪島市町野町地区の野球場やテニスコートだった場所に建設された仮設住宅団地。木造平屋が並び、一角に集会所がある。衆院選期間中の2日間、期日前投票所となり、入居者らが訪れた。
「水泳をやっていた頃はあそこのプールに通っていたし、このグラウンドで野球をしたこともあるんだ」。期日前投票を終えた粟倉宏さんが懐かしそうに語った。隣接するプールは地震で配水管が壊れ、水が引けなくなっている。
粟倉さんの自宅は地震で倒壊。使えるはずだった家財も豪雨で水に漬かり、沈んだ心に追い打ちをかけた。仮設住宅を出た後は、富山県内で親と暮らす予定だ。「(地元では)これで最後かも」と考え投票したが、故郷を愛する気持ちは強く、「復興に熱い思いを持つ人に託してきた」と強調した。
この仮設住宅で生活し、介護施設で働く女性は「今は休業手当をもらっているが、いつまでこの状態が続くのか。なりわいを何とかしてほしい」と訴える。
市中心部の職場は地震で段差や亀裂が生じ、解体が必要とみられるが、見通しが立たない。仮設住宅近くの別の介護施設も被災したままで「介護が滞ることが個人的には腹立たしい」と語気を強める。
これまで義務感で投票してきたが、今回は違った。「『こんな時に選挙するのか』と思ったが、『こんな時だからこそ何とかしてほしい』という思いを込めた」
金沢市内のみなし仮設のアパートで暮らす男性も訪れ「田んぼが広がるのどかな所だったが、景色が変わってしまった。少しでも復興が進んでほしいと願い、微力ながら投票した」と語った。
輪島市など被災地の自治体は、地震や豪雨の影響で投票所を変更したり、臨時の期日前投票所を設けたりするなど対応に追われた。夜間に復旧途上の道路を行き来すると危険なため、輪島、珠洲両市は27日の投票終了時刻を通常より2時間以上繰り上げた。〔共同〕
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