閉会式であいさつするSTSフォーラムの小宮山宏理事長(8日、京都市)

京都市で開かれた「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」の年次総会が8日、閉幕した。最終日にまとめた声明には「責任ある人工知能(AI)利用のためには透明で一貫した対応が必要だ」との文言を盛り込んだ。急速に進化するAIへの期待を示しつつ、悪用を防ぐ仕組みが重要だと指摘した。

STSフォーラムの年次総会はノーベル賞受賞者や研究者、経営者、各国の政策関係者らが集まり、科学技術の発展のあり方を議論する。21回目の今回は6〜8日の日程で80を超える国・地域や国際機関からおよそ1400人が参加した。

気候変動から医療、教育まで幅広い観点で議題にあがったのが生成AIだ。科学技術の進歩や人々の生産性向上に貢献して地球規模の課題解決に役立つと期待される一方で、兵器への利用や人権侵害につながるリスクが指摘された。

STSフォーラムの小宮山宏理事長は講演のなかでAIの活用は明暗両面がある複雑な問題だと指摘した。人類の発展には欠かせない技術だとして「試行錯誤しながら使い方を考えていく必要がある」と話した。

国際的なAIの開発競争が激しさを増すなか、適切な規制のあり方も話し合われた。責任あるAIの利用には開発者に対する規制が必要だとの意見が出た一方で、負担が大きすぎると投資意欲がそがれてしまうとの懸念も示された。

台湾積体電路製造(TSMC)前董事長(会長)の劉徳音(マーク・リュウ)氏は閉会式の講演で「イノベーション(技術革新)を阻害しないよう、適切な規制が必要なタイミングで実施されるべきだ」と述べた。「科学者と政治家のオープンな連携が必要だ」とも強調した。

今回のSTSフォーラムでは参加者による提言とは別に、議事要旨などを読み込んだAIにも提言をまとめさせた。AIは参加者らの議論に基づいて「コラボレーションや規制、倫理的な思考がリスクを低減してAIを役立てるカギだ」と指摘した。

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