政府の有識者会議は29日、首相官邸で会合を開き、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた最終提言をまとめた。重要インフラ事業者が使用するIT(情報技術)機器を登録制にするように求める。石破茂首相は「日本のサイバー対応能力の向上は現在の安全保障環境に鑑みるとますます急を要する課題だ」と述べた。

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政府は2025年1月に召集する通常国会での関連法案の提出を目指す。首相はサイバー安全保障を担当する平将明デジタル相に提言内容を踏まえて可能限り早期に関連法案を作成するよう指示した。

能動的サイバー防御は国が平時から主に海外間や海外から国内への通信情報を分析し、重要インフラへの攻撃などの兆候を探知した段階で攻撃元のシステムに入り無力化する仕組みだ。自衛隊や警察が無力化措置などを担う見通しだ。

最終提言は通信情報を取得する場合はメールなどの中身ではなく、個人を特定できない通信日時や量といったメタデータ(属性情報)を対象とすべきだと提起した。

独立した第三者機関が関与するなど、憲法上の「通信の秘密」に配慮した制度設計を進めるよう要請した。

官民の連携を効果的に進めるために民間の協力も求めた。水道や電力など重要インフラ事業者を対象に攻撃の被害を政府に報告するよう義務づける。

電力、水道、医療などの重要インフラ事業者が使用するIT機器やソフトウエアの情報を国に登録するよう義務づけることも盛り込んだ。

政府からの情報を共有する官民の協議体の設置も主張した。不審な通信情報の監視を通じて攻撃の予兆や傾向があれば民間事業者に警戒を促し、さらなる被害の拡大を防ぐ。

官民で情報を共有する際は経済安全保障上の機密情報のアクセス権を付与する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の活用を見込む。

政府は22年末の国家安全保障戦略で能動的サイバー防御の導入を明記した。会議は佐々江賢一郎元駐米大使が座長を務め、サイバー対策の実務者、情報法が専門の学者ら計17人で構成する。6月から法整備に向けた論点に関して議論を進めてきた。

政府・与党は提言を受けて、日本維新の会や国民民主党など法整備に前向きな野党にも協力を呼びかける方針だ。

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