東京科学大学の澤田知久准教授や東京大学の藤田誠卓越教授らは、たんぱく質の材料となるペプチドの基本構造の一つ「β(ベータ)シート」を化学的に合成することに成功した。部品となる分子の構造を工夫し、金属イオンと混ぜると狙った構造が自然に組み上がるようにした。有用な機能を持つペプチドの合成に役立つ。論文が独化学会誌「アンゲバンテ・ケミー」に掲載された。

東京科学大学はペプチドの基本構造の一つを化学的に合成した=澤田知久准教授提供

人の体をつくるたんぱく質は20種類のアミノ酸が大量に連なってできている。アミノ酸が数十個連なったものがペプチドで、医薬品や化粧品に応用できるため量産方法が模索されている。

触媒などを使った化学合成は、生物の力を借りる生物合成に比べ低コストで量産に向くとされる。ただペプチドの安定性を高めるβシート構造を作りにくいのが課題だった。

βシート構造はアミノ酸数個からなる「βストランド」という直線状の部品が平行に並んでできる。研究チームはこの部品に金属イオンと結合できる構造を加えた。部品とイオンを混ぜると結合し、特定の構造が自然に組み上がる「自己組織化」が起きる。イオンとの結合部をつける位置や方向を工夫し、4つの部品から狙った構造のみが組み上がるようにした。

従来は部品を組み合わせようとすると、部品の先端の位置がずれたり、部品が逆向きになったりした不良品が生じてしまっていた。

ペプチドの化学合成では、もう一つの基本構造の「α(アルファ)ヘリックス」は比較的作りやすいとされる。基本構造を効率よく合成できれば産業応用を後押しできる。

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