ハッピーに、そして健康になれたら、言うことなしだが FRANCKREPORTER/ISTOCK

<研究が進んでおり、えりすぐりの素材と酵母を使った低アルコールビールに酒造会社は期待。だが一方で...>

ビールといえば、宴会で友人たちと楽しく酌み交わすイメージはあっても、体にいい飲み物と考える人は少ないだろう。だが研究によれば、一部のビールには健康効果が期待できるかもしれない。プロバイオティクスが含まれている可能性があるからだ。

「プロバイオティクスとは、腸にいい影響を与える細菌や酵母などの生きた微生物(または、そうした微生物を含む食品)を指す」と、健康指導を行っている栄養士のキャサリン・ポールは言う。


「カプセルや粉の形で販売されているものは、サプリメントとして飲んだり、ヨーグルトドリンクなどの食品に混ぜて摂取することもできる。生きたヨーグルトやケフィア、ザワークラウトやキムチ、コンブチャなど、発酵した食品や飲料にも含まれる」

ビールも発酵食品の一種だから、場合によってはプロバイオティクス的な効果を得るに十分な量の生きた酵母が含まれているかもしれない。

実際、2022年の「農業食品化学ジャーナル」に発表された研究によれば、毎日ハーフパイント(約236ミリリットル)のビールを飲んだ男性は、腸内細菌叢のバランスに改善が見られたという。

腸内細菌の果たす役割について、ポールはこう説明する。「食品に含まれる繊維などの消化できない成分を分解し、ビタミンやミネラルなど栄養素の吸収を高める。免疫システムを整える上でも重要な役割を果たし、体に害となる細菌などの微生物が増殖しすぎるのを防ぐのに役立つ」

ポールによれば、プロバイオティクス食品は便秘や下痢といった消化器の不調の緩和や、メンタル面での健康維持に役立つ可能性もあるという。

だが、大半のビールには健康効果は期待できないとポールは言う。そもそもビールにはアルコールや糖分も含まれているから、「健康効果を期待してアルコールを摂取するのはおすすめしない」。


アルコールの害で相殺?

「確かに節度を保って飲むなら、健康にいい栄養素や植物由来成分を摂取できる可能性を示す研究もある。ビール製造の発酵段階で作られるプロバイオティクス成分についての研究も進んでいる」と、ポールは言う。「だがそうした健康効果は、ビールに含まれるアルコールが消化器や身体に与えるマイナスの影響で相殺される可能性が高い」

英アストン大学の研究チームは20年、ビールに含まれる体にいい物質を増やし、悪い物質を減らす製造方法について検討した論文を発表した。

それによれば、特定の条件がそろえば、ビールはプロバイオティクスやビタミンB12、ポリフェノール、抗酸化物質、ファイトエストロゲンのほか、さまざまな体にいいミネラルを含むようになる可能性があるという。

健康効果を狙ったえりすぐりの素材とプロバイオティクスの酵母を使い、発酵をゆっくりと進め、アルコール度を低く抑えれば、体にいい低アルコールビールが作れるかもしれない。酒造会社の期待も高まっている。

しかし、ポールは懐疑的だ。「健康にいいものを探しているなら、ほかにもっといい選択肢は数多くある。だったら、飲んでおいしいと思えるものを飲めばいいのではないか」

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