春から初夏が収穫期となるさやえんどうは薄黄緑。同じえんどう豆でも色味が異なる「黄えんどう豆」が最近、タンパク源として注目されている。栄養が豊富でバランスのとれた「スーパーフード」として、さまざまな食品で活用が広がっている。
黄えんどう豆を小麦粉代わりに使うパン「ZENB BREAD」(ゼンブブレッド)は袋入りで、味は3種類。雑穀、カカオ、くるみ&レーズンがあり、インターネットによる通信販売のほか、実店舗では銀座ロフト(東京都中央区)で手に入る。令和5年11月、定期購入用として発売されるとすぐ品切れに。その後も増産と売り切れを繰り返す。
袋を開封すると、パン独特の香ばしさに包まれた。香りや見た目は、ふつうのパンとさほど違いが感じられない。しかし、ひと口食べ、しばらく噛(か)み続けると、豆特有のコクのある風味がじわりと広がった。
「開発には約4年かけました」と話すのは、製造販売する「ZENB JAPAN」の広報担当、林亮人さん。同社はミツカン(愛知県半田市)のグループ会社で、全部を意味するその名には「植物を可能な限りまるごと使う」などの意図が込められている。
黄えんどう豆は大豆と比べ脂質が少ない。一方でタンパク質をはじめ食物繊維や鉄分、ビタミンB1などの栄養価が豊富だという。林さんは「黄えんどう豆の優れた栄養価を生かしたくて、パンの原材料として取り入れた。主食にすれば、手軽に黄えんどう豆を食べてもらえる」と語った。
ツナや鶏肉に近い食感
コンビニエンスストア大手「セブン―イレブン」で5年から販売している新たな食品シリーズ「みらいデリ」にも、黄えんどう豆が使われている。
例えば、「おむすび 和風ツナマヨネーズ」は、本物のツナと、黄えんどう豆由来の植物性の代替ツナを混ぜて具にしている。代替ツナを製造したのは、植物肉の開発・生産を手がける「DAIZ」(ダイズ、熊本市)。
「大豆由来のものと比べて繊維感があり、ツナや鶏肉に近い食感を実現できる」(同社広報)という。
北欧スウェーデン発祥の家具メーカー「イケア」の日本法人「イケア・ジャパン」(千葉県船橋市)は、2年から黄えんどう豆などを使ったミートボール状の「プラントボール」を販売している。
以前からある通常のミートボールと合わせた販売数で見てみると、日本では4年9月~5年8月期は、プラントボールが44・4%を占め、本家のミートボールに肉薄していた。
「イケアを展開する各国と比べても、かなり高い数字です」と話すのは、日本法人カントリーフードマネジャーの菊池武嗣さん。
黄えんどう豆の栽培は灌漑(かんがい)が不要で、水を節約できるという利点もある。「栽培の面でも模範的な食品。サステナブル(持続可能)なフードを通じてビジネスを実現するという目標にかなっている」と菊池さん。今後も販売を継続していく予定だという。
鉄分豊富な点は高評価
日本には豆腐や納豆、しょうゆ、みそなどを用いてきた長い歴史があり、大豆をはじめ、豆を食べる習慣がすでにある。
一方、黄えんどう豆は北欧やロシアなどで食べられてきたもので、これまで日本の食卓に上ることはあまりなかった。なぜ今、活用が広がるのか。「日本人に不足しやすい栄養素の一つ、鉄分などを豊富に含む点ですぐれている」と評価するのは、豆料理アドバイザーの五木のどかさんだ。「黄えんどう豆はスーパーフードという位置づけで、健康に気を使う人たちを中心にどんどん注目されていくでしょう」と語る。
水資源を節約し、体にもよい。未来志向のタンパク源ともいえそうだ。
(竹中文)
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